第10章 10
テオさんと一緒に若手の画家の作品を買い付けに行った帰り道。
テオ「今日はなかなかいい収穫があった。」
テオさんは満足げに微笑んでいる。
「皆さん凄かったですね!」
つられて私も微笑む。
絵画をこんなにたくさん見たのは初めてで、どれも繊細で美しかった。
「私、絵のことはあまりわかりませんが…でも今日は色々な綺麗な物が見られて楽しかったです。」
テオ「難しく考える必要はない。お前が直感で良いと思ったものを信じろ。」
実は今日、テオさんが買い付ける絵を私にも選ばせてくれた。
絵のことはわからないから、と断ったけれど
テオさんがお前が好きなのを一つ選べ。と言ってくれたから気になったのを選ばせて貰った。
私が選んだのは綺麗な少女が描かれたもので、少女の儚げに微笑む表情に惹かれたのだ。
その絵を見た時、テオは「お前の雰囲気に似ているな。」と言ってくれた。
モデルは若い画家の夢の中の恋人…というものらしくて、毎晩夢に出てくる綺麗な女性を描いたらしい。
「気に入った絵は直感で選んだつもりです。なんとなく惹かれてしまって…」
テオ「ああ、綺麗な絵だったな。たまにはこういうのも悪くない。」
テオさんは基本的に日常を描いたものを多く買い付けているらしく、私が今日選んだような絵は珍しいと言っていた。
「でも良かったんですか…?私が選んだものまで…」
テオさんが多く扱っている画風と私の選んだ絵の画風は全く違っていた。
テオ「お前はこの絵が気に入ったんだろう?理由はそれだけで充分だ。」
「それなら、良いんですけど…」
そのまま暫く通りを歩く。
不意にテオさんが立ち止まり
テオ「実はこの絵はお前にやろうと思って買った。初めて自分で選んだ絵だ。部屋にでも飾っておけ。」
そう言って、キャンバスバッグを渡される。
「えっ?貰っても、いいんですか…?」
でもこの絵、高かったんじゃ…?
私が考え込んでいると…
テオ「つまらんことは考えるな。今日の仕事の報酬だ。受け取れ。」
テオさんがぶっきらぼうに呟く。
「本当に、良いんですか…?」
テオ「ああ。その代わり今後も俺の仕事を手伝え。いいな?」
「はいっ、私で良ければいつでも!本当にありがとうございます!」