第10章 10
私がまだ不満げだと思ったのか、テオさんが意外なことを口にする。
「えっ…?テオさん…?何か悪いものでも食べましたか…?」
あまりに意外な言葉に、私は本気でテオさんの体調が悪いのではないかと思った。
テオ「は…?チッ、せっかく褒めてやったのに。悪いものなんか食べていない。」
私の言葉を聞いたテオさんは不機嫌そうに呟く。
本当に褒めてくれたんだ、嬉しい
「本当ですか?嬉しいです!」
私は身につけているパステルブルーのワンピースの裾を少し持ち上げる。
ふわっと広がった裾と、たっぷりのレースが揺れる。
「でも意外です、テオさんって結構可愛い格好が好みなんですか?」
今日のワンピース、結構フリフリしてるんだけど…
テオ「あまり調子に乗るな。馬子にも衣装って言ったんだ。」
しかしテオさんは私の問いには答えてくれない。
「マゴ…?」
テオ「馬子にも衣装。わかりやすく言うと、駄犬にダイヤの首輪。」
「なんだか、そう言われるとあまり褒められている気がしないです…」
テオ「さぁ?どうだろうな。今日のお前はダイヤの首輪をした犬だ。お行儀よくしろよ。」
お行儀良くって…
「やっぱり褒めてないですよね?せっかく嬉しかったのに…」
私は唇を尖らせる。
テオ「どうだろうな?…おい、そろそろ行くぞ。雨が降りそうだから傘を持て。」
テオさんの言葉に私は空を見上げる。
空は晴れて透き通った青空が広がっている。
「え?こんなにいいお天気なのに…?」
雨が降りそうには見えないけど…
テオ「いや、今日は降る。濡れた犬になりたくないなら傘を持って行くんだな。ほら行くぞ。」
半ば強引に傘を持たされる。
まあ、本当に降ったら困るし…大人しく言う事を聞いておこう。