第9章 9
楽しそうなアーサーの声。
意地悪だ…!
「き、気のせいじゃない?」
平静を装って答えるが、視線はまだ上げられない。
「ふーん?そーんな反応されると、無理矢理にでもこっちを向かせたくなるなー」
そのままアーサーが私の髪に触れる。
「っ!」
髪を撫でる手にピクリと反応してしまう。
「…なーに、そのかわいー反応。」
それを見逃さないアーサー。
「なんでもなっ…」
否定しようと動いた口は、頰に触れるアーサーの手に反応して固まってしまう。
「ね、俺のコト意識してるでしょ?」
アーサーの手が私の赤く染まった頬を撫でる。
「してない…」
言葉とは裏腹に顔の熱はますます高くなる。
「嘘。だってキミ、今どんな表情してるかわかる?」
頰を撫でていた手が私の顎を優しく掴み、強引に視線を合わされる。
「アーサー…!」
「そーんな真っ赤な顔で、目も潤んで…俺のコト煽ってるの?」
アーサーの表情が変わる。
いつもの軽薄さはそこには無く、まるで…
「そんなこと、思ってない…」
まるで、血を求めている時の飢えた獣のような表情に
私の身体はますます熱くなる。
「アーサー、恥ずかしい…離して…」
容赦なく注がれる視線に耐えきれなくなり、私は消え入りそうな声で呟く。
「そんな抵抗じゃ狼は兎を逃さない。嫌なら、もっと抵抗しなよ。
俺にゼンブ、食べられちゃうよ…?」
アーサーが目を細めて私を見つめる。
「アーサー、意地悪なこと言わないで…」
弱々しく懇願するも…
「そーいうの、逆効果。
はい、時間切れ。煽ったキミが悪いんだから…」
アーサーが顎を掴んでいた手で私の唇を薄く開かせ…
「…んっ!」
そのまま深く口付けてくる。
毎晩の食事でキスには慣れていたはずだけど…
深い口付けに頭がぼーっとする。
「っ…はぁ、んぅ…アー…サ…っ」
アーサーの精力と一緒に熱いものが流れ込んでくる。
「っ…んっ…」
何度も繰り返される口付けに、私の全身から力が抜けてアーサーの胸にもたれかかるようになると、ようやく唇が離された。
ぐったりする私の唇の端からは溢れ出た雫がこぼれる。
「アーサー、今のは…なんで…?私、まだ食事必要無い…」