第9章 9
アーサーの部屋に着いた。
この間お邪魔した時は机の上に原稿用紙が散乱していたけど、
この間とは打って変わり、机も部屋も綺麗に整頓されていた。
「アーサーは結構几帳面なの?」
「んー?そんなことはナイと思うけどー…
まあ、執筆以外では普段あまり部屋に居ないからねー」
言いながら、アーサーはソファに腰掛ける。
「キミもそんなところに立っていないで、隣においでよ。」
ぽんぽん、とソファを軽く叩くアーサー。
「ありがとう、お邪魔します。」
言われた通りアーサーの隣に並んで腰掛ける。
ギシ、とソファが軽く軋む音が部屋に響く。
なんだかこの距離感…落ち着かない…
腕を組んで座るアーサーの肩と私の肩が触れてしまいそうなほど近い。
おかしいな…毎晩食事の時はもっと近いのに…食事の為ではあるけど、キスだってしてるのに…
触れそうで触れない絶妙な距離に、変に意識してしまう。
アーサーも何も喋らないし…緊張する
私が一人ソワソワしていると…
「…そーいえば、俺の書いた小説が読みたいんだっけ?」
不意にアーサーが口を開く
「は、はい!あ、じゃなくて…」
突然の問い掛けに慌てた私は思わずおかしな反応をしてしまった。
恥ずかしいっ
「ごめん、なんでもない…うん、読みたいなーと思ってます…」
そのまま隣に座るアーサーに視線を向けると…
「っ…」
思っていたよりも近い距離で見つめ合う形になってしまい、慌てて下を向く。
顔…熱い…おかしい…
下を向いてはいるけれど、アーサーの視線を感じてますます頰が熱くなる。
なにこれ…
そんな私の反応を楽しんでいるようなアーサーの声が聞こえる
「アナスタシア?なーんか様子がおかしくない?
…もしかして、俺と二人きりで緊張してる…?」
「っ…!そんなこと!」
慌てて否定しようと顔を上げると、先程よりも近い距離で不敵な笑みを浮かべたアーサーと目が合う。
なんでこんなに恥ずかしいの…!
思わず目を逸らしてしまう。
「ホントにー?だってさっきから…キミと視線、合わないんだけど?」
「そんなことないです…」
俯いたまま小さく呟く。
「ほらまたー。ね、なんでこっち向いてくれないのー?」