第9章 9
「ね、何して過ごす?デートでも行こっか?」
アーサーがいつもの調子で呟く。
デート…その響きに少しだけくすぐったい気持ちが湧いてくる。
「デート…」
「そ。デート。キミはお手伝い以外でお屋敷の外に出ることは少ないでしょー?今日はキミの行きたいところ、何処でも連れて行ってアゲル。」
たしかに外に出ることは少ない…けれど
「嬉しいけど、今から行くとあんまり長い時間居られなさそうだし…出掛けるのは今度にしない?」
廊下の時計は15時を指していた。
出掛けるなら、もっと早い時間から思いっきり楽しみたいかも…
そう思って断ると…
「俺は夜のデートでも全然イイんだけどー。
まあ、キミがそう言うなら仕方ない。お屋敷の中で出来ることか〜。」
うーんと呟き何か考えている様子のアーサー。程なくして。
「…それじゃ、俺の部屋に来る?」
アーサーの口から思いもよらなかった言葉が飛び出す。
「アーサーの部屋…?」
テオさんがアーサーは部屋にあまり人を入れたがらないと言っていたことを思い出す。
この間は知らなくて勝手に入ってしまったけど、アーサーは嫌だったんじゃないの?
そんなことを考えしばらく黙り込んでいると
「アナスタシアー?どーする、部屋に来る?」
アーサーはいつも通りだ。嫌がっている感じはしない、けど…
「でも…いいの?アーサーの部屋にお邪魔して…」
おずおずと口を開く。
「俺は全然いーけど?…まあ、アナスタシアが俺にイケナイコトされてもいいなら、ね。」
途端にアーサーが色気を纏い囁く。
「イケナイコトって?」
なんのことかわからずに質問すると
「…ん、ナイショ。どうする?キミが決めてイイよ」
よくわからない…けど
「アーサーが嫌じゃないならお邪魔してもいい…?
貴方の書いた小説とか…読んでみたいし。」
「へーえ?キミってば意外と大胆だねー?
俺に襲われないように気をつけてね?」
「襲われるの…?」
「さぁね。それはキミ次第。」
そのまま私はアーサーと一緒に彼の部屋へと向かうのだった…