第9章 9
そんな私の反応を見たアーサーは…
「どう?意外とスッキリしてて飲みやすーい。なんて思わなかった?」
「すごい!どうしてわかったの?」
するとアーサーが得意げに微笑む。
「そんなのキミの反応を見たらわかるよ。それに俺言ったでしょー?キミ好みに淹れてあげる。って」
本当…苦味はあるけど苦手な感じはしない。むしろ…美味しい。
「アーサーって凄いのね。本当に私の好みがわかるの。」
微笑みながら答えると…
「ん。その笑顔、合格。
気に入ってもらえて良かった。次はキミの番だよ?
俺好みに淹れてくれる?」
そういえば、お互いがお互いのために淹れる約束をしていたっけ…
でも、いくら練習していたとは言えアーサーみたいに上手く淹れられる自信がない…
「美味しくないかもよ…?」
おずおずと答えると
「キミが淹れてくれて美味しくないハズないでしょ?
ちなみに俺は濃いめが好き。」
「頑張る…」
楽しそうに笑うアーサーに言われるがまま、私はたどたどしい手つきでコーヒーを淹れるのだった。
……
キッチンを出る頃にはお互いの服にはコーヒーの香りが染み付いていた。
「んー…」
アーサーが小さく伸びをする。
「アーサーはこれからまた執筆に戻るの?」
「そのつもりだったけど、アナスタシアと過ごせるのは久しぶりだしー…」
アーサーが迷っているような口ぶりで漏らす。
「お仕事の邪魔は出来ないし、呼んでくれればいつでも行くから…」
「えー?だってキミは最近人気者だし…こんな機会でも無いと一緒に過ごせないでしょ?」
確かに、アーサーの言う通り最近はお屋敷の皆さんのお手伝いに呼んでもらえることが増えていた。
ふと疑問に思っていたことを聞いてみる。
「どうしてアーサーは私と過ごしたいの?」
私の問いかけにアーサーが一瞬目を見開く。
「どうして…?どうしてだろ…
アナスタシアは俺と過ごすのは嫌?」
質問に質問で返される。
「えっ?私は、うーん…
わからないけど、今日は久しぶりに沢山お話が出来て嬉しかったし…このまま解散は少し寂しい…かな?」
素直な気持ちを口にすると
嬉しそうに微笑むアーサーと目が合う。
「ほんとー?
それじゃ、やっぱり今日は執筆はしない。このまま一緒に過ごそうか。」