第9章 9
「ん、そーかも。最近のアナスタシアは忙しそうだもんねー。
キミと話す機会が減って寂しいなー。テオとも前にも増して仲良くなってるみたいだし、ちょっと妬ける。」
いつも通りの軽い調子でアーサーが呟く。
確かに…なんだかこうして話すのが懐かしいような…
「私も少し寂しかったかも。でもそういうアーサーだって執筆作業に忙しいんじゃないの?」
私の反応に目を丸くしたアーサー
「その反応は予想外…
キミも俺に会えなくて寂しかったの?じゃあ…今日はこのまま一緒に過ごす?」
アーサーが囁く。声のトーンがいつもと違う…
「…でも執筆作業をしていたんじゃないの?」
「んー?執筆作業は一旦おしまい。だってこんな風にキミと過ごすのは久しぶりだし。
一緒にコーヒーでも飲もっか?キミ好みに淹れてアゲル。」
あ、そういえば…
少し前に 今度はキミ好みに淹れてアゲル と言ってくれたことを思い出した。
それから随分と経つけど、覚えててくれたんだ。
「本当?嬉しい!
でも…実は私もアーサーに初めてコーヒーを貰った日から今まで
自分でも淹れられるように練習していたのよ。」
少し得意げに答えると
「そーなの?それじゃ、俺の分はキミが淹れてよ。キミの分は俺が淹れるから。」
アーサーから思いがけない提案をされる。
「えっ!でも私まだそんなに上手く…「いーから、ね。お願い?」
断ろうとする私を制して、アーサーが甘えたような声で言う。
「キミが淹れてくれたコーヒーが飲みたいな?期待してるよ。」
う…断れない……!
「…頑張ります」
渋々承諾した私は、悪戯っぽく微笑むアーサーと共にキッチンへ向かうのだった。