第8章 8
程なくして…
私の目の前にはホカホカと湯気を上げる美味しそうな料理達が置かれていた。
セバスチャン「すみません、急ごしらえの為品数は多くありませんが…どうぞ召し上がって下さい。」
そう呟くセバスチャン。だけど…
「そんな!充分過ぎます!」
かなりしっかりした品数が置かれている。とても急ごしらえとは思えない…
何から手をつけていいか迷っていると…
テオ「スープを飲んでみろ。美味い。」
テオさんに言われるままにスープを口にする。
「美味しい…!」
野菜の甘みとスープの塩気が絶妙!
目を輝かせる私を見てテオさんが
テオ「気に入ったみたいだな。本当…お前はすぐ顔に出る。」
「だって!とっても美味しくてほっぺが落ちちゃいそうです!」
セバスチャン「お口に合って良かったです。アナスタシアさんさえ良ければまたこうして食事を作りますよ。」
「本当ですか?私あんまり人間の食べ物って食べたことが無かったんですけど…こんなに美味しいならもっと早くに食べておけば良かったです!」
興奮気味に感想を述べると
テオ「幸せそうな顔だな。お前犬みたい。」
「いぬ…」
同じくスープに手をつけながらテオさんが呟く。
セバスチャン「テオドルスさん、スープが冷めているのでは?温め直しましょうか?」
セバスチャンさんの声につられてテオさんのスープを見ると、弱々しい湯気が上がっているだけだった。
「本当ですね…テオさん、もしかして私の料理が出来上がるのを待っていてくれたんですか…?」
まさかと思って尋ねると…
セバスチャン「おや…そうなんですか?テオドルスさん」
テオ「っ…そんなわけないだろう。勘違いするな。」
少し頰を染めたテオさん。
語気にも勢いがない。
やっぱり!待っていてくれたんだ。
「ふふっ、テオさんって優しいですね。私のことを思って美味しいものを教えてくれるし…」
思わず微笑むと…
テオ「…うるさいぞ。調子に乗るな。駄犬のくせに…」
「駄犬!?」
いぬだけじゃなくて駄犬だなんて…
セバスチャン「アナスタシアさん、テオドルスさんが駄犬と呼ぶのは気に入った方だけですよ。」
「そうなんですか…?」
テオ「セバス!余計なこと言うな!」
慌てるテオさん。
テオさんってもしかして素直じゃないだけ…?