第8章 8
テオ「そろそろ夕飯の時間だな。」
不意にテオさんが呟く。
「ええ、時間は…そうですね。でも…」
ここの人達は食事を必要としていないのでは?
あ、ルージュ?を飲む時間ってこと…?
「ルージュっていうのを呑む時間ですか?」
私の問いに、テオさんが顔をしかめる。
えっ…機嫌が悪そうに…
テオ「お前なぁ…いくら食事が必要ないとは言え、味覚はあるんだ。ルージュだけで生活しているやつなんてほとんど居ない。」
「あっ…そうだったんですね!ごめんなさい、私てっきり…」
確かに、味覚があるのならお腹いっぱいにならなくても色んなものを食べたい…のかな?
首をかしげる私の姿を見たテオさん
テオ「お前はまさかアーサーの精力しか口にしていないのか?」
「えっと…たまにアーサーがくれるファッジとか、あとコーヒーは口にします。
でも毎日ではないです。」
そう答えると、テオさんが信じられないという顔をする。
テオ「信じられんな。そんなもの食べたうちに入らないだろう。
…そうだ、今から食堂に行くからお前も付き合え。拒否権は無いからな。」
「えっ!」
そのまま引きずられるように食堂に連れて行かれる。
………
食堂
テオ「セバスチャン、夕食を頼む。」
セバスチャン「用意出来てますよ。おや、今日はアナスタシアさんもご一緒に?」
「い、いえ私は…」
テオ「あぁ、急で済まないがこいつの分も頼む。」
セバスチャン「かしこまりました。アナスタシアさん、少しお待ちいただけますか?」
「は、はい…」
そのままテオさんの隣の席に座らされる。
「あの…ここってフィンセントさんの…」
テオ「兄さんは暫く戻らないから平気だ。今日はお前に色々教えてやるから隣に座ってろ。」
「はい…」
言われるがまま隣に座る。
「…テオさん?食べないんですか?」
テオさんの前には既に出来上がった料理が置いてある。しかし手をつける気配が無い。
テオ「ん…?あぁ、後でな。」
「そう…ですか」
不思議に思いながらもそれ以上聞くことはせず、私は料理が出来上がるのを待っていた。