第8章 8
フィンセントさんに指定された場所に行くと…
「綺麗…」
そこは色とりどりの花が咲き乱れる庭園だった。
その庭園の真ん中に、フィンセントさんがイーゼルを立てて待っていた。横には、テオさんも。
テオ「遅いぞアナスタシア。…まあ、兄さんのモデルをするために色々と考えていたようだから今回は許してやる。」
「ごめんなさいっ!」
フィンセント「こーら、テオ。女の子には優しくしないとダメだよ?
アナスタシア、今日はモデルを引き受けてくれてありがとう。」
柔らかく微笑むフィンセント。
「いいえ。それよりも、本当に私がモデルで良いのですか?」
フィンセント「勿論だよ。貴女に頼みたかったんだぁ。」
「でも私、モデルのポーズとかわからないです…」
不安に思っていたことを口に出してみる。
テオ「ポーズとか、そんなものは考えなくていい。いつも通りのアホ面で立っていろ。」
「アホ面なんて初めて言われました!」
テオさんは私のこと嫌いなのかな…
顔をしかめていると、フィンセントさんの柔らかい声が聞こえる。
フィンセント「ごめんね、テオは素直じゃないから…モデルのことを伝えると、アナスタシアがいいんじゃないかって言ったのはテオなんだ。アナスタシアは自然体で綺麗だから、って」
フィンセントさんが申し訳なさそうに眉を下げる。
「テオさんが…?」
テオ「おい兄さん!それは言ってくれるな…!
ッチ…まあそういうことだ。わかったらさっさとそこの椅子に座れ。」
テオさんが少し赤くなりながら呟く。
なんだか、フィンセントさんと居る時のテオさんは可愛い…
「ふふっ…ありがとうございます。ご期待に添えるように精一杯頑張ります!」
思わず笑みが溢れる。
フィンセント「うん、今の表情すごーく素敵。テオの言った通り、アナスタシアにお願いして正解だったなぁ」
テオ「…確かに、今の顔は悪くなかった。兄さんが描き終わるまでそのままキープしていろ。」
「えぇっ!?それは無茶です…」
フィンセント「2人とも、仲良くしてね」
終始和やかな雰囲気のまま、日が暮れるまでモデルのお手伝いは続いたのだった…