第8章 8
アーサーの部屋にお邪魔した日から数日後…
この日はフィンセントさんに絵のモデルをお願いされていた。
「絵のモデル…‘彼’が趣味で絵を描く時何度かお願いされたことがあったけど…」
でも今回は趣味の絵とは違う。
フィンセントさんは絵を描くのがお仕事なんだから。
「モデルって、どんな感じなんだろう…」
髪とか…ちゃんとした方が良いのかな?
悩んでいると、不意に部屋をノックする音が聞こえた。
テオ「アナスタシア、まだか?兄さんをあまり待たせるな。」
テオさんの声。
「テオさん!あの、聞きたいことがあるんです…!」
そのまま私は部屋の扉を開きテオさんを中に招き入れる。
テオ「聞きたいこと?なんだ。手早く済ませろ。」
少し苛立っている様子のテオさん。
「ごめんなさい…!
あの私、ちゃんとしたモデルをするのは初めてで…服装とか、髪とか…どんな風にしたら良いのかなぁと…」
おずおずと口を開くと…
テオ「なんだ、意外とちゃんと考えていたんだな?いい子だ。」
意外にもテオさんの反応が優しい。
「ありがとうございます…?あっ、それで…服装とかどうしたらいいでしょうか?やっぱり綺麗なドレスを着た方が…?」
テオ「そんなものは要らん。兄さんはいつも通りのお前を描きたいと言っていた。わかったらさっさと支度するんだな。」
いつも通りでいいのね…!
「わかりました、すぐに支度します!」
急いで着ていたルームウェアを脱ぐと…
テオ「おい…お前は着替えを人に見せる趣味でもあるのか?」
テオさんの呆れた声。
「…?そんな趣味はありません。でも急いでいるんですよね?
それに、中にもう一枚着ているから平気です。」
言いながら、ワンピースタイプのインナー姿になる。
テオ「そういう問題じゃないだろう…お前はもっと警戒心を持て。
ここに居たのが俺で良かったな。
…着替えが済んだらすぐに来い。じゃあな。」
そのままテオさんが部屋を出る。
「…警戒心」
そう呟き、私も急いで支度を始めた。