第4章 4
伯爵「太宰とジャンヌが居ないようだね。」
アーサー「太宰はまたフラフラしてるんじゃないー?」
テオ「アーサー、お前が言うのか。」
ナポレオン「ジャンヌは他に用があると言っていた。」
伯爵「そうかい。仕方ない。ジャンヌと太宰には私から伝えておこう。
待たせたね、アナスタシア。皆も。では、晩餐会を始めようか。」
……
晩餐会を終えた私は風に当たるため屋敷のバルコニーに来ていた。
他の皆も食事を終えると各々の部屋へ戻っていき、食堂に残っていたのは伯爵とセバスチャンさん、テオさん、フィンセントさん…そしてアーサーさんだけだった。
夜のフランスを眺めながらこれからのことを考えてみる。
「…このお屋敷に居れば1人になることは無いと伯爵は言ってくれた……」
「変ね。1人なんて慣れていた筈なのに。あの人と過ごしてから弱くなったみたい。」
そう呟きながら彼の灰を胸に抱き締める。
「貴方のことも早く埋めてあげないとね…」
今夜は綺麗な満月だった。
あの人と離れた三日月の晩から少しだけ時が経った。
「見て。今日は満月だよ。貴方と過ごすまで月なんて興味なかったのに。沢山綺麗なものを教えてくれてありがとう…」
目尻に涙を浮かべながら月を見つめる。
喜怒哀楽を教えてくれたのも彼だった。
笑ったり、怒ったり、幸せの意味を理解したり…
哀しい感情は彼が居なくなった晩に初めて知った。
「っ…まだ、会いたい…寂しい…貴方にもう一度、触れたいっ…」
堪え切れない涙が堰を切ったように溢れ出す。
「 哀しい の止め方は…教えてくれなかったっ…わからない、よ…」
彼を胸に抱きながら泣いているとバルコニーのドアが開く音がする。
「あれー?アナスタシアちゃんじゃん。部屋に戻ったと思ってたケド、ここに居たんだねー」
この声は、アーサーさん…
どうしよう。泣いていたことがバレてしまう。
焦る私をよそに、アーサーさんの気配が近付いてくる。
「こーんなところに居ると、風邪ひいちゃうよー?
体調、治ったばかりなんでしょ?」
すぐ近くにアーサーさんが居る。
私は急いで溢れる涙を拭い、月を見上げながら答える。
「す、少し風に当たりたくて…でももう戻るつもりなのでっ…!」
少し声が震えてしまった。気付かれていませんように。