第4章 4
その日の晩。
伯爵が用意してくれた深紅のドレスに着替える。
肩にはケープを羽織っているため二の腕の傷痕も目立たない。
それもこれも伯爵が用意してくれたものだ。
「本当…伯爵には感謝の言葉じゃ足りないな…」
ポツリと呟くと同時に部屋のドアノックする音が聞こえ
伯爵が入ってくる。
「思った通り、君にとても似合っている。」
スマートにドレス姿まで褒めてくれる。
「何から何まで本当にありがとうございます…
こんな素敵なドレスまで用意していただいて…」
「美しい女性にプレゼントを贈るのは当然のことだろう?
君の身につけていたドレスは血まみれになっていたからね。
今度新しいドレスを仕立てに行こうか。」
「いえっ、そんなことまでして貰うわけには…!」
遠慮する私をよそに、伯爵は慣れた手つきでエスコートをしてくれる。
「君はもっと他人に甘えてもいいと思うよ。綺麗な女性の特権だ。
さて…お手をどうぞ。晩餐会へ向かおうか。」
……
伯爵にエスコートされながら広いお屋敷を少し歩くと
分厚くて重厚そうな扉の前に辿り着く。
「君はここに入るのは初めてだったね。ここが食堂だよ。この中で晩餐会を開くんだ。皆集まっていると思う。入ろうか。」
「は、はい…」
「緊張しなくても大丈夫。皆アナスタシアを歓迎しているよ。」
大きな扉が開かれる
「わぁ……!」
扉が開くと長いテーブルに複数人の男性が座っていた。
中から声が聞こえる
アイザック「遅い。待ちくたびれた。」
アーサー「伯爵ー。アイちゃんが早く食べたいってー。
…そして初めまして、可愛い女の子。元気になって良かったー」
テオ「アーサー。俺らは初めましてじゃないだろう。
…助かって良かったな。」
フィンセント「貴女には早く会ってみたかったんだぁ。もう身体は平気なの?俺の前が空いているから、ここに座るといいよ。」
レオナルド「面白そうなお嬢さんだな。」
ナポレオン「無事で何よりだ。」
モーツァルト「早く座れば…」
こんなに沢山の人に囲まれるのは生きてきて初めてのことだった。
「初めまして。このお屋敷でお世話になります。アナスタシア…と申します。お好きなようにお呼びください。」
精一杯の自己紹介を済ませ助けを求めるように伯爵を見つめてみる。