第4章 4
「アナスタシアちゃん?」
アーサーさんの不思議そうな声が聞こえる。
「私戻りますね!今日はありがとうございましたっ…!」
バレたかも知れない…
これ以上知られたくなくて、私はアーサーさんから逃げるようにバルコニーを後にした。
……
アナスタシアが去った後
アーサーside
「泣いてた…?」
俺の問いに答えた彼女の声は震えていた
そして…先程まで彼女が居た場所の手すりは不自然に濡れていた。
「……こーんなに沢山の水分を身体から出したら、干からびちゃうよ…あれ?」
彼女の立っていた場所に小さな瓶が落ちていた。
「なんだろこれ…?砂…みたいだけど…」
俺の脳裏に若い男が不自然に失踪した事件が浮かぶ。
彼女が関わっているだろうとは思っていた。伯爵が言っていた、
‘あの子も特殊な種族だ’ と
俺たちと同じヴァンパイアだと思っていたけれど…
血を飲んでいるところは見ていない。てっきり伯爵がルージュをあげていると思っていたけど、晩餐会の時 彼女のグラスには‘普通の’ワインが注がれていた。
「灰…ね。」
美しい女の姿をした種族に、若い男の不自然な失踪、小瓶に入った灰。彼女の涙。
「そーゆーことね。」
パズルのようにピースが揃い、出来上がった真実。
「小瓶、渡しに行かないと。」
そのままアーサーは、少女の部屋の方へと歩いて行った。