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落花

第17章 落花




会いたくて堪らなかったキミに、やっと会えた…なのに

「アナスタシア…?ねぇ、こんなところで眠ると身体が冷えちゃうよ…?」


ピクリとも動かない彼女に触れる。

彼女は綺麗な顔で、少し微笑みながら眠っている。


冷たい、ホラ…こんなに身体が冷えちゃってるじゃない。

ねぇ、目を開けて…俺のことを見つめて…


テオ「ッ…アーサー、こいつはもう…」

苦しげな顔のテオが零す。


「テオ、手伝って。アナスタシアを運ばないと。
こんなに身体が冷えちゃってる…早く温めてあげないと。」

テオ「やめろ、アーサー…」

動かない彼女を抱きしめる俺を、顔を歪めたテオが見下ろす。

「テオ?なんでそんな顔してるの…?
アナスタシアにやっと会えたんだよ。もっと嬉しそうな顔をして…」


テオ「アーサー!こいつはもう動かないんだ!
お前は…わかるだろうが…」


テオが目を伏せる。


「いや、だ…アナスタシア
どーして…俺はずっとキミに会いたくて…なのに、こんなのってヒドイよ、アナスタシアッ…!」


動かない彼女。冷たい身体。
それが何を意味するのか本当はわかっていた。

‘あの子’の時に
もう二度と味わいたくないと思ったのに…


「俺がもっと早くキミを見つけられたら良かった…
どうして?…キミは俺たちと同じで…終わりなんて…無いんじゃないの…」


苦しい。

キミの柔らかな体温も、ころころ変わる表情も…

昨日まで俺の生きる糧になっていた彼女の懐かしい記憶が、今はこんなにも俺を苦しめる。


お願い、もう一度…俺に笑顔を見せて…


彼女を探し続けた数百年、もう一度触れたいと思っていたキミの…

冷たくなった唇にキスをする。





長いキスを終えると、少しだけ違和感を感じる。

最初は彼女の唇に俺の熱が移ったのだと思っていた。

けれど…

「アナスタシア…?」

彼女の唇の消えるはずの熱が、なかなか冷めない。


「っ、キミは…!」

テオ「アーサー?どうした…?」

テオがまだ気遣わしげに声を掛けてくる。



テオに答えることなく、俺は再び彼女にキスをする。


温かい、気がする…

もしかして…彼女は……







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