第17章 落花
運転手「何度も言ったんだ、待っていてやるから…って。でもお客さんはその度に断って…誰か迎えに来てくれるのか?とも聞いたんだよ。そしたら今度は微笑みながら 迎えは来ないけど、行くべきところに行く。だから大丈夫だ…って。あんまり綺麗に微笑むもんだから、それ以上何も言えなくなっちまって…」
待って、それは…どういう意味…?
俺の身体から血の気が引いていく。
‘行くべきところ’
嫌な汗が背中を伝う。
テオ「おい、アーサー…もしかしてあいつは…」
「そんなの、許さない…。やっとここまで辿り着いたのに…やっと彼女に会えると思ったのに…」
運転手「探偵さんたち、湖まで行くんだろう?燃料を入れたらすぐに出発しよう。俺がそこまで連れて行く」
……
燃料を補給したタクシーに乗り、湖まで向かう。
空には彼女と二人で眺めた時と同じ、綺麗な月が浮かんでいた。
暫くして…
運転手「探偵さん達、着きましたよ!」
「ありがとう!テオ、急ごう!」
テオ「ああ!」
運転手「俺はここで兄さん方の帰りを待っているからな!」
タクシーを降りて、湖のほとりまで駆ける。
「アナスタシア!居るんでしょー?返事して!」
テオ「おい!どこに居る!?」
大声で呼びかけるも、物音一つ聞こえない。
「テオ、湖の周りを探してみよう」
テオ「っ、そうだな」
二人で必死に彼女を探す。
そして…
「テオ、あそこ…あそこだけ開けている」
湖のほとりの奥、月の光が降り注ぐ場所を見つけた。
今居る場所からは生い茂る木々が邪魔をして様子はわからない、けれど…
「行ってみよう…」
生い茂る木々を掻き分ける。
空に浮かぶ月に、一瞬だけ雲がかかり辺りが暗くなる。
そして再び月の光が照らし始めると…
「っ…!アナ、スタシア…?」
小さく盛り上がった土に、供えられた花。
その側で目を閉じて動かない彼女が居た。