第17章 落花
アーサー
キミを探して美術館を後にする。
俺は…アナスタシアを選んだ。
テオ「まだ遠くへは行っていないはずだ。手分けして探すぞ。」
彼女にあと一歩で届きそうなのに…
パリの人の多さが恨めしい。
走って、走って…彼女を探す。
辺りはいつの間にか薄暗くなっていた。
彼女はパリにそんなに詳しかった?
俺と一緒に出掛けた場所の知識しか無いはずだ。
それなら、彼女と一緒に歩いた場所を片っ端から潰して行こう。
不意に、甘い匂いがする。
「あのクレープ屋さんは…」
2世紀前と同じ場所…同じ甘い匂い。
頰にクリームをつけて笑う彼女の顔が浮かぶ。
「すみません…!人を探しているんです…ローズピンクの瞳の…」
店仕舞いをしていた店主はまだ年若い女の子だった。
彼女と訪れた時、嬉しそうに選ぶ彼女にアイスクリームをオマケしてくれた店主とよく似た目元をしている。
店主「ローズピンクの瞳?その女性なら昼過ぎに苺のクレープを買って行ってくれたわよ?あんまり幸せそうに微笑んでくれたものだから、よく覚えているわ。」
「本当にっ!?その子は何処へ向かいましたか?何か言っていませんでしたか?」
間違いなくアナスタシアがこの街に居る。
近くに、居るんだ…
2世紀分の気持ちが溢れそうになる。
しかし
店主「うーん…悪いけど、そういったことは言って居なかったわ。
あ、でも通りでタクシーを拾うのを見たわよ。」
「ありがとう…!」
タクシーを拾ったということは、遠くへ行くつもりだった…?
どこへ行ったの…アナスタシア
テオ「おいどうする?行き先がわからないんじゃ後を追うことも…それに、昼過ぎに出たんだろう?とっくにパリから出ているんじゃ…」
「ダイジョーブ、ここのタクシーは決まったエリアを回っているから、彼女を降ろした運転手はもう戻ってきているはず。片っ端から聞き込むよ」
テオ「本気か?何百台居ると思っているんだ。それに、あいつを乗せた運転手が戻っている保証は無いだろう?」
「今日見つからなかったら、明日朝から探す。俺が何カ国回ったと思ってるのー?タクシーの何百台くらいどうってことない。」
不敵に微笑む。
2世紀も探し続けて来たんだ。
こんなことで諦めるワケないでしょー?
キミを必ず見つけるから…