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落花

第17章 落花




テオ「しっかりしろ!お前はどっちを選ぶんだ。
モタモタしているとどっちも失うことになるぞ!」


テオに叱責される。

そうだ、俺が今…取るべき選択は…


「テオ、俺決めたよ。叱ってくれてありがとー。ちょっと冷静になった。」


そして俺が選んだのは…



………
アナスタシア



あの子と別れてすぐに美術館を後にする。

きっとこれで良かったはず。アーサーの元へ無事にたどり着いたかな…

変わってしまった街並みを眺めながら歩く。

最初は覚えられなかった街も、アーサーと何度か外出しているうちに覚えていた。

お店や建物が変わっているけど、道はあの頃のまま。

不意に、甘い匂いが漂ってきた。


知ってる。この香り。

顔を上げると、クレープ屋さんが目に入る。

ああ、やっぱり。あのクレープ屋さんは知っている。

引き寄せられるようにお店に近付く。

当たり前だけど、店主はあの時とは違う。

小さなことにも彼等と自分の生きる時間が違っているんだと実感させられる。


あの時の店主によく似た目元の歳若い女の子に注文をする。

「苺のクレープをお願いします。」




店主からクレープを受け取り、一口齧る。

あの時と同じ、甘くて美味しい。

そういえばあの時は最後まで食べられなかったな、と思い出す。

そう、アーサーが庇ってくれて…新しくドレスを選んでくれて…

懐かしさに微笑みを浮かべながら再び街を歩く。

「そうだ、あの湖はまだ残っているのかな…?」

アーサーに連れられて行った湖を思い出す。


タクシーに乗り込み、湖まで、と簡潔に伝えると、タクシーが発進する。

良かった、まだ残っているんだ…


車窓から外を眺める。

湖に行ったら…この長い旅を終わりにしよう。

2世紀もの間埋めることの出来なかった彼の灰を湖のほとりに埋めて…それから…


「…着くまで、眠ろう。」


そのまま私は眠りに落ちた。











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