第17章 落花
「えっ…?私ですか…?
うーん…貴方の言っていることはちょっと難しいけれど、恋愛相談だと思って良いですか?初めて会った相手に相談なんて、面白いですね」
くすくす笑う彼女。
そして
「好きになってはいけない相手なんて居ませんよ?
恋する気持ちは誰にも縛られるものじゃないです。
貴方が誰を想うのも貴方の自由ですよ。」
彼女の言葉に、胸が熱くなる。
そうだ。この子はこういう子だった。
真っ直ぐで、健気で…弱いと思ったら強くて…
俺が初めて愛したキミ。
「ありがとう、キミにまた会えて良かった…」
彼女の手を握る力を少し強めて、額にキスをする。
ちゅ
「わっ!」
「俺を…よろしくね…」
懐かしい体温と…大好きな声を聞けて良かった。
そのまま俺は、振り返らずにその場を後にした。
……
あの子の居る部屋を後にして、急いで美術館の中を探す。
アナスタシアが…確かにここに居る。
どこにいるの?どれだけ探したと思っているの?
広い美術館の中を隅々まで探した。けれど、
「居ない…」
すぐ近くに居るのはわかっているのに、届かない。
途方に暮れていると別行動をしていたテオが戻ってくる。
テオ「アーサー?どうした、手掛かりは見つかったか?」
「テオ!あの子が…今日はあの子が扉を抜けてあのお屋敷にやってくる日だったっ…!その子が、アナスタシアと一緒に居たって!」
一気に伝えたため、要領を得ない説明
テオ「落ち着け!あの子…?駄犬が居たのか!?ここに?
それに、アナスタシアと一緒だったって…どういうことだ!?」
「あの子が、アナスタシアから美術館に残るように言われたって…きっと過去の俺と出会わせるために…一緒だったのは、何故かはわからない…アナスタシアとは今日初めて会ったって言ってた…」
テオ「っ、それで、アナスタシアは今どこに居る?それに、お前はいいのか?今ならまだ間に合う。駄犬ともう一度一緒に過ごすことだって…」
「俺はっ…あの子もアナスタシアも大切なんだ。
このままあの子が過去に行けば、きっと俺を選んで、二度とここには戻らなくて…俺があの子を今追えば、きっとアナスタシアと出会うことはなくなって…テオ、どうしたらいい?俺は……どちらかなんて選べない…」
キミの姿に、本当は後ろ髪を引かれていた。