第3章 3
部屋にリゾットや果物が運ばれてきた。
「病み上がりだからね。消化に良さそうなものを作らせたよ。苦手なものはないかい?」
食事…この身体は食事を摂らなくても平気だけど…
私の食事は人間の精力だ。彼と過ごしている時は彼から精力を奪わないよう植物や動物の命をわけてもらっていた。
もちろん代用品にもならなくて結局彼の命を奪ってしまった。
私達にとって人間の食事は嗜好品と同じ。
でも彼はよく私に料理を作ってくれていた。
幸せだった日々を思い出して、胸が苦しい。
「わかりません。でもこれは…食べたことがある気がします。だからきっと……苦手では無いと思う。」
我ながらおかしなことを言っていると思う。
けれど目の前の伯爵は不思議そうな顔もせずに微笑んでいる。
「そうかい。それは良かった。食事が済んだら少し話をしよう。無理はさせられないからあとでまた君の部屋へお邪魔するよ。」
そう言い残して伯爵は部屋から出て行った。
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ちょうど食後の果物を食べ終わった時部屋のドアが開かれ伯爵がやってきた。
「ちょうどいいタイミングだったね。口には合ったかい?」
「はい。とても美味しかったです。」
「それは良かった。セバスチャン、彼女の皿を下げてくれ。
なにか飲むかい?」
伯爵の声に応えて執事の身なりをした男性が食器を下げてくれる。
「飲み物…は、大丈夫です。」
セバスチャンと呼ばれた執事が部屋を出て行ったのを見届けて伯爵は口を開く。
「さて…先程の食事では満たされないだろう?
随分血を流したね。私ので悪いが…」
そう言って伯爵が唇を重ねてきた。
「っ!」
驚いて目を見開いた私に構うことなく、伯爵は深く唇を重ねてくる。
私の体力が戻っていく…
長い口づけを終えて、伯爵が唇を離した。
「…かなり消耗していたようだね。急に口付けたことは詫びよう。怪我の痛みはどうだい?」
「痛みは、大分ましになりました。あの…でもどうして…?貴方の力を貰ってしまって良かったのですか…?死んでしまうのに…
それに……いつ、わかったのですか。」