第3章 3
「精力のことは気にしなくていい。私も人間では無いからね。君に力を与えても死なないし衰えない。
君の正体についてはなんとなく気付いていたよ。決定打になったのはその灰だね。」
「待ってください!人間ではないの…?貴方も私と同じなのですか?」
伯爵から告げられた言葉に衝撃を受ける。
そして同時に、死なず衰えもしない自分の同類が居たことに酷く安堵した。
「君と同じ種では無いけれど…似たようなものかな。君は精力を食べ、私達は血を食べる。」
「血を…?それに、私達と言うのは?あなた以外にも不死者が居るのですか?」
「私は純血のヴァンパイアなんだ。私以外もなにも、この屋敷に居る住人は皆私がヴァンパイアにした。セバスチャンは別だよ。彼は人間だからね。君にはあまり近付けてあげられない。」
「ヴァンパイア…存在したのですね…」
「驚いたのは私も同じだ。サキュバスが存在しているとは思わなかった。」
私の正体もあっさりとバレてしまった。
「そうです。私はサキュバス。大正解です。」
「君は人間を愛してしまったんだね。利害関係のない契約を結んでしまった。その灰は君の大切な人かい?」
「はい…私が彼を愛してしまったから、彼は消えてしまいました。私も彼とともに消えたいと望んだのに…」
「人を愛するのは悪いことではない。種族の違いなんて気にならないほど人を愛した君のあり方を誰も責めはしないよ。」
「でもっ…!私が居なければ彼はもっと生きられた!
ひ、人と…人と結ばれることだって、きっと…っ、ううっ」
彼を愛していた。今も愛してる。
私を愛してくれた彼を死なせてしまった。
人間の女の人と生きることも出来たのにその機会を私が奪ってしまった。
「その愛しい人が選んだ君自身をそんな風に言ってはいけないよ。
君の愛する人は君と生きることを望んだんだ。自分の命を削ることも厭わない程君を愛していたんだろう。」
「っ、う…」
「大丈夫。君はひとりじゃないよ。君さえ良ければこの屋敷に住むといい。君と同じように人間を愛したヴァンパイアも居る。
ここには君のあり方を責める奴は居ないよ。君の性質だって、不死のヴァンパイアに影響は無いんだから。
もう1人で生きなくていいんだ。」
伯爵の優しい言葉に涙が溢れる。
「1人じゃ、ない…?」
「あぁ。勿論。」