第17章 落花
「本当ですか?私も綺麗なものを見るのが好きなんです!この美術館には一度来てみたいと思っていて…」
可愛く微笑みながら楽しそうに話す彼女。
つられて私も微笑み返す。
「私もここには初めて来ました。パリには住んでいたことがあるけれど…」
「そうなんですか?私、海外旅行が好きで…パリに住んでいたなんて羨ましいなぁ…」
暫く他愛もない会話をしていると、不意に彼女が
「そういえば、お名前はなんて言うんですか?初めて会った人とこんなに話が合うなんて嬉しくて…良かったらお名前だけでも教えてくださいませんか?」
「勿論です!私はアナスタシアと申します。あなたは?」
「アナスタシアさん!綺麗な名前ですね!
私は、ーーーと申します!」
その名前を聞いて、驚いてしまう。
この女の子は、アーサーの…
アーサーが言っていた。その子は不思議な扉を抜けてこの世界へやってきた、と。
もしかして、彼女は今からアーサーの居る場所へ…?
「あっ、いけない…そろそろ出ないと次の予定が…んー、まだ見足りないけど、仕方ないかなぁ…」
「っダメ!まだ見ていったほうが…!」
ここで彼女が立ち去ると、2人が出会わなくなってしまう。
それは、ダメ…アーサーに愛を教えてくれた貴女。
「えっ…?うん、そうですね!アナスタシアさんの言う通り、もう少し見ていこうと思います!」
良かった。これで貴女とアーサーが会える。
「それがいいと思います。私ももう少しだけ見ていきます。
…今日、貴女に会えてよかった。ありがとう。」
「?
私も会えてよかったです!またどこかでお会いしましょう!」
そう言って美術館の奥へと向かう彼女。
「アーサー…私も会えたよ。貴女の愛した女の子に…」
そして私は彼女と逆の方向へ進み、美術館を後にした。