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落花

第16章 距離と想い





「どうしてテオを庇うのっ…!そんなに、ヨかったの…?」

思わず挑発的な言い方になる。ああ、最低だ。俺。

俺の言葉を聞いた彼女が、一瞬悲しそうな顔をした後

キッと睨みながら答える。


「アーサー!もうやめてってば!」

こんなに怒った顔は初めてだった。

あー…嫌われてしまった、かな…

思わず顔を歪めると…

「ごめんっ…あの、でも本当にこれ以上聞かないで欲しいの…ごめんね。もう行くね…」

俺よりももっと苦しげな表情を浮かべた彼女が足早に去っていく。


彼女の背中を見送りながら呟く。


「ナニソレ…本気ですって、言ってるようなものじゃん…」


そして去っていった背を追いかける。

ちょうど彼女の自室の前で腕を掴んで止める。

「アーサー、お願いだから放っておいて…!」

「嫌だ、俺はそんなの認めない。」

そのまま彼女に唇を近付ける。

「やっ…!」

すんでの所で顔を逸らされた。

どうして。なんで俺じゃないの。キミを誰にも渡したくない。


焦っていたんだと思う。逸らされた彼女の頰を掴み、強引に口付ける。


「んんっ!」

固く閉じられた唇を無理矢理開き、舌を入れて更に深く口付ける。

「ふっ…んぅ…」

時折苦しそうに吐息を漏らす彼女に構うことなく、何度も何度も角度を変えては長い口付けをする。


「はっ…」彼女から唇を離すと、俺とアナスタシアの間に銀色の糸がツゥ、と伝う。


「…。」
意外な表情のキミ。怒っていると思ったのに…


その表情は、俺を求めていた。

なんでそんな顔するの?

キミがわからない…けれど…

今なら、気持ちを伝えても許されるような気がした。


「アナスタシア、俺と…」

言いかけると、泣きそうな顔をした彼女と視線がぶつかる。


そして…

「アーサー、私は…‘彼’をまだ愛しているわ。」


「っ…」


「だからね、私のことは嫌いになってっ!お願い…アーサー…」

泣き出しそうな彼女から紡がれる言葉。


そして


「じゃあねっ、アーサー…おやすみなさいっ…」



そう言い残して自室へと入っていく彼女。


俺はしばらく部屋の前から動くことが出来なかった。







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