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落花

第16章 距離と想い




何を、言えばいい…?


「あっ、そーだ。アナスタシア…そろそろ食事が必要だよね?
…食べる?」


5日に1度程の食事にはなったけれど、今日はもう6日目だった。

きっと必要だと思い、問いかけてみる。


「えっと…今日は大丈夫。かも。」


気まずそうに呟く彼女。

その乱れた姿…


「そっか…。テオに貰った?」

「えっ…?」

アナスタシアが目を泳がせて、俯いてしまう。


図星か。俺の中にまた嫉妬心が芽生える。


「ねー、テオにもあげたの?キミの血。」

「血は…あげてないと思う。多分…」

煮え切らない返事の彼女。

「たぶん…?」

また、嫌な予感がした。

そして彼女の口から告げられた言葉。

「うん、気が付いたらテオさんと一緒に眠っていたから…」

その言葉に、血の気が引く。

「一緒に眠っていたの?テオと。」

怒りを含んだ声が出てしまう。

乱れた服に、髪。
最悪な予感が当たりそう。


「ねー、どうしてそんなに乱れているの?キミの服。
それに髪も…」

「えっ…」

戸惑う彼女に、一歩近づく。
触れてしまいそうなほどの至近距離。


キミの甘い匂いと…

「キミから…テオの匂いがするんだけど。」

甘い匂いの中に今朝知った、キミの汗の匂い…あとは、テオ。


「テオの匂いと、キミの匂いが交じってる。」

「っ…アーサー、近い…」

その可愛い声も、柔らかな肌も…

「ねぇ、テオに抱かれたの…?」

「なんでそんなことっ…」

「答えて。キミはテオに抱かれたの?」

今度は少し強く問う。誤魔化さないで。尋問のような俺の問いに、アナスタシアは少しだけビクリとした。

「……はい。」

たっぷりの沈黙の後、小さく答えた彼女。


どうして。今朝はあんなに嫌がったのに…

テオなら、いいの?


「ふーん?テオのことは受け入れられたんだ?
…俺の時はあんなに嫌がったのに…」


苦しい…キミを取られたくない。誰にも。


「っ、わたし、ほんとは…」

何か言いかける彼女。しかし。

「とにかくっ…テオさんとそう、なってしまったのは私が誘ったから…それ以上のことは聞かないでっ…!」


キミが、誘った…?

テオのことを?


全身の力が抜けてしまいそうになる。






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