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落花

第15章 アーサーside




彼女の手を引き、大通りで馬車に乗り込む。

空はいつの間にか茜色になっていた。


……

馬車に揺られながら、俺は向かい合わせで座った彼女を見る。

馬車の窓から外を眺めている彼女の横顔が綺麗で、見惚れてしまう。

俺のものになって欲しい、なんて思ってしまった。


キミが‘彼’を愛しているのは知っている。

俺だって、居なくなった‘あの子’のことを忘れたわけじゃない。

忘れられる訳がない。俺に愛を教えてくれた‘あの子’

けれど、目の前に居るアナスタシアを愛しく想う気持ちを止めることが出来ない。

ねぇ、俺のこと…許してくれる…?


じっと見つめている視線に気が付いたのか、アナスタシアと目が合う。

「アーサー?じっと見つめてどうしたの?
もしかして、また私の顔に何か付いてる?」

キョトンとした後、慌てて手で顔に触れるキミ。


「んー?キミの横顔が綺麗で見惚れてたの。」

「へっ!?」

俺の言葉に、素っ頓狂な声を上げる彼女。

そんな声、ハジメテ聞いたなー
なんだか今日は色んなキミを見せてもらってる気がする

「ぷっ…なーに、その声。ハジメテ聞いた」

あまりの可愛らしさに吹き出してしまう。

「っ!アーサーが急に変な冗談言うからでしょ!」

真っ赤になってぷんぷんするキミ。

怒った顔もかわいー、なんてね。

「えー?ジョーダンなんかじゃないよ。
俺はいつだって本気だから。このままキミを連れ去っちゃうかもー」

ますます赤くなる彼女に少しイタズラ心が湧く。
もっと照れて。俺の知らない顔を、見せてよ。


「なっ、なにを…!」

口をパクパクさせる彼女。ちょーっとからかいすぎたかな?

「ごめんごめん。キミってばほーんと、からかいがいがあるよねー?」

そろそろ許してあげよーかな。もう少し困らせてみたい気持ちはあるケド。

悪戯っぽく微笑んで見せると…

「アーサーってばほーんと、意地悪だよねー?」

俺の口調を真似して反論してくるキミ。

「っ!」

不意打ち…
あんまり可愛くて、一瞬言葉に詰まってしまう。

カッコ悪い…俺らしくないなー。


そんな俺の様子を見て、今度はアナスタシアが吹き出した。

「ふふっ!どう?意地悪なこと言うから、仕返しだよ?」

首を傾げながら見つめてくる彼女。

その仕草も、ずるい…





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