第15章 アーサーside
彼女の手を取りながらパリの街を歩く。
「ねぇアーサー?どうしたの?ここまでしてくれなくても大丈夫だよ…?」
遠慮がちに告げられる言葉。
違う、俺が繋ぎたいの。
「んー?だってホラ、手を引いていないと誰かにキミを取られちゃいそうだしー
…周りを見てみなよ。みーんなキミのことを見てる。」
「そんな訳ないじゃんっ…!」
「そんな訳あるのー。だって俺、さっきからずーっと視線を感じるし。」
そう呟くと、アナスタシアの瞳がきょろきょろと辺りを見回す。
「なんだか、アーサーのことを見ているみたいだよ…?」
「それはキミがあんまり綺麗だから、羨まれてるのー。
当然デショ?あーあ、男から見詰められても嬉しくないんだけどー」
「そんなことはないと思うけど…」
「良いから、しっかり手を繋いで?
こわーいオオカミに、食べられないためにも…ね。」
「オオカミ…」
「そ、オオカミ。だいじょーぶ、俺がちゃーんと守ってアゲルから。」
「わかった…じゃあ、お願いします…」
アナスタシアの柔らかい体温がキュッと俺の指を掴む。
繋がれた手から心地良い体温が伝わってくる。
「ん、いい子ー。」
すると不意に彼女が口を開き…
「あのね、アーサー…このドレスも、髪も…アクセサリーも…
とっても嬉しい。本当にありがとう。なんだか、ドレスの色がアーサーで、お花の色が私みたいだね…?
アーサーの色に染まってる?」
はにかみながらそう伝えてくれる彼女に、堪らない気持ちになる。
可愛くて、愛おしいキミ。
キミが欲しい。俺のモノになって。
もう戻れないほど彼女で心が埋め尽くされる。
「どーいたしまして。うん、俺の色に染まってる。
ねぇ、アナスタシア…キミのこと、このままどこかに連れて行ってしまいたいんだけど…ダメ?」
溢れる気持ちを抑えることが出来なかった。
気が付いたら口をついて出た言葉。きっと俺の本心…
「っ…!どこへ連れて行ってくれる、の?」
何処へ…?うーん、そうだなー
思わぬ反応に少し考えると、ある場所のことが思い出される。
「んー、とっておきの場所。期待しててよ。」
きっと気に入る筈だから。
例え受け入れられなくてもいい…そこで、俺の気持ちを伝えよう。キミに。
だって…もう隠すのは無理だから。