第15章 アーサーside
「アーサー、せっかく買ってくれたクレープ、落としちゃってごめんね…
でも私、伯爵から貰ったお金が少しあるからっ…新しいのを買ってくる!結局アーサーは一口も食べられなかったし…!あ、落とした方は私がっ!」
女「まだ言ってるの?落としたものを食べるなんて本気?本当にスラムの出身なのかしら?ねぇアーサー、なんでこんなのと一緒に居るのよ?」
アナスタシアのことを、こんなの…とか。下品、だとか。
流石に我慢の限界だった。俺が口を開きかけた時…
「アーサー…ごめんね…私、やっぱり…
あの…先に帰るねっ…!」
今にも泣き出しそうな顔をして立ち去ろうとするアナスタシア。
ダメ、そんな顔させたままになんか出来ない。
腕を掴んでいる女の子を振り解き、
俺はアナスタシアの細い腕を掴む。
「アーサー…?」
そしてそのまま、クリームが付いた彼女の指を舐める。
「っ!な、何を…!」
びくりとして手を引こうとする彼女。
今度は唇の端に付いたチョコレートソースを舐める。
「んっ…!」
甘い。
「ん。ご馳走サマ。やっぱりキミの言った通り。
クレープ、甘くて美味しいね?」
アナスタシアと至近距離で目を合わせる。
ローズピンクの瞳が驚きで揺れていた。
「あ、クリーム…舐めてたの?」
アナスタシアの頰も少しだけ染まっている…気がした。
「そー、誰かさんがこの子のこと押したりしたせいで、俺のクレープ落ちちゃったしー?」
そう呟きながら、アナスタシアを馬鹿にしていた女の子達を鋭く見つめる。
女「な、なによ!そんな下品な女…どこがいいのよ!?」
また下品って。
アナスタシアの肩がピクリと震えて、俯いたまま顔を上げてくれない。
この子を傷付けないで。
「この子を悪く言わナイで?俺の大切な子なの。
それに、突然押し寄せてきて人のことを汚いとか…
そんなことを平気で言うキミ達の方がよっぽど下品なんじゃないかなー?」
女達「っ!」
「わかる?俺今すごーく怒ってるんだけど?」
再び厳しい視線を向けようとすると…