第15章 アーサーside
ドンッ!
「わっ!」
勢いよく押されたため、華奢な彼女はよろけて手に持っていたクレープを地面に落としてしまう。
「ちょっと、キミ達っ…!」
女「え?なぁに?気がつかなかったわ。ごめんなさいね〜」
アナスタシアを押した女の子は全く悪びれる様子もなく落としたクレープを拾い上げる彼女を見ていた。
嘘だ。絶対わざとぶつかったでしょー…
女「あーあ、綺麗なワンピースにチョコレートが付いちゃって可哀想〜。」
別の女の子もアナスタシアの姿を面白そうに見ている。
「アナスタシア!だいじょーぶ?」
女の子を押しのけて彼女のところに向かおうとするも、腕を掴まれていて思うように動けない。
アナスタシアはと言うと…
「どーしよう…でも砂を避ければまだ…」
真剣な表情で拾い上げたクレープを見ている。
女「ぷっ…なにあの子?落としたクレープを食べるつもり?」
女「信じらんないっ!汚いわね。」
女達はアナスタシアを見て笑っている。
「キミたち、なにを…」
止めようとするも…
女「ねぇあなた、アーサーの友達?落ちたクレープを食べようとするなんて汚いわね!」
女「そうよ!恥ずかしいと思わないのぉ〜?」
可笑しそうに笑いながら、アナスタシアに向かって大声で叫ぶ女達。
「ちょっと、ヤメてっ!」
「でもっ、せっかくのクレープが!砂を避ければまだっ…!」
俺の制止を他所に、アナスタシアが言い返すも…
女「信じられないわ!本気なの?ねぇアーサー、こんな下品な子放っておいて私達と行きましょう!」
女「あなた、スラムの生まれ?くすくす…
本当に汚いわね。こんな食い意地の張った女と歩かなきゃいけないアーサーが可哀想!」
次々とかけられるキツイ言葉に、アナスタシアはついに俯いてしまう。
「いい加減にして、みんな」
我慢できなくなり、少し強い口調で咎めるも…
女「やだぁ、この子泣いちゃった?」
女「まるで私達が悪いみたいじゃない。でもこれに懲りたらアーサーには近付かないでね?あんたみたいな下品な女といるなんて、アーサーが恥をかくわ!」
不意に、俯いたままのアナスタシアが口を開く。