第15章 アーサーside
アナスタシアのローズピンクの瞳を見つめて言ってみる。
仕返し…
「ほんと?ありがとう。嬉しい!
あ、私着替えてくるね。少し待っていて?」
ウソでしょ、全然効いてない…
無邪気に微笑みながら着替えに向かう彼女の背を見詰めながら、俺はため息をつく。
「なーんか…俺ばっかり意識してるみたい…」
……
アナスタシアの着替えが終わり、パリの街へ繰り出す。
てゆーか、ワンピース似合いすぎでしょ…
パリの街をキラキラした目で見つめる彼女の姿を見ながら
俺はその可愛い姿に目を奪われていた。
ふと、アナスタシアがその場で立ち止まる。
「どーしたの?」
「ねぇアーサー、あれはなぁに?」
彼女の視線を追うと、クレープを持ってはしゃぐ女の子達を見つける。
そっか、この子は甘いものが好きなんだっけ。
コーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れていた姿を思い出す。
「んー?クレープのこと?」
「クレープ…?」
「そう。フルーツを薄い生地でサンドして、上からチョコレートソースやホイップクリームをかけて食べる冷たいお菓子のこと。知ってる?」
「初めて聞いた!ホイップクリームが乗ってるってことは甘いの!?」
俺の説明を聞いて目を輝かせる彼女。
その表情からは興味津々な様子が伝わってきた。
「うん、甘くて美味しいよー。
食べたい?買ってあげる、何味がいいー?」
メニューを示して聞いてみる。
すると彼女は一瞬嬉しそうな顔をしたものの、すぐに慌てた表情になる。
「ダメだよ!私あんまりお金持ってないもの!」
ん?遠慮してる?
「そんなのイイから。ホラ、好きなの選んでー?」
「でもっ…」
尚も断る彼女。こういう時、頑固なんだよねー。
「俺も食べたいから、分けてくれる?ホラ、俺そんなに甘いもの得意じゃナイしー。キミから分けて貰うくらいで丁度イイんだけどー?」
まあ、ここ数ヶ月間一緒に居てキミの扱いは心得ているケドね?
そう提案してみると、彼女の顔がパッと明るくなり…また難しい顔になり…
すごーく、考えてる…
コロコロ表情が変わって、見ていて飽きない。
そしてようやく…
「それなら…いい、かな…?」
何故か疑問形の彼女。
「うん、俺の為だと思って。」
まあ、甘いものが苦手なのは嘘だけど…