第1章 手紙
スズキさんに連れられ着いた場所は、会議室のような部屋だった。私はスズキさんとこんのすけに向かい合う形で椅子に腰掛けた。
その後、スズキさんから審神者についてのある程度の説明を受けた。細かい部分はこれをお読み頂くかこんのすけにお聞き下さいと、まぁまぁ分厚いマニュアル本を渡される。それと、仕事着について。
私はそれらに素直に受け答えると、次にスズキさんは私の本丸について話始めた。
「今回天宮様に担当していただく本丸は…」
実は私が行くことになっている本丸は、元々私とは別の審神者が居たという。しかし、その前の審神者は本丸をブラック化したとかで辞めさせられたと聞いた。
つまり、私はその審神者の後任となる訳である。
「…私からは以上です。何かご質問は御座いますか?」
『…無いです』
「では、早速本丸へと向かいましょう」
『はい』
私は緊張気味なのか騒ぎ立てる心臓を横目に、一人と一匹と共に部屋を後にした。
エレベーターに乗って幾つか階数を重ねた後、長い廊下を歩いている途中、ふと大きなドアの前でスズキさんは止まった。
ドアの横にあるパネルに何かパスワードのようなものを打ち込んでいく。
するとドアがひとりでに開き、私達を中の部屋へと迎い入れた。
「どうぞお入り下さい」
部屋の中は真っ白だった。
天井も壁も床も全て真っ白。しかし、部屋の真ん中辺りには良く目立つ朱色の鳥居が一つ佇んでいた。その傍らには長細い箱のようなもの。
何だろう…?
鳥居の前まで来るとスズキさんは、長細い箱だと思っていたパネルにまた何か数字を打ち込んでいく。
そして、此方を向き微笑んだ。
「では、私は此処までとさせて頂きます。何かお困りで有れば、こんのすけをお呼び下さい」
「主様!私この、こんのすけが主様を全力サポート致します!!」
下を向けば、頼って下さいと言わんばかりの眼差しのこんのすけと目が合った。
廉はそれに頷き返し、宜しくと伝えた。
「この鳥居の先に天宮様の本丸が御座います。
では、天宮様の御健闘をお祈りしております」
『はい…!』
そっとこんのすけと目を合わせ、本丸へと続く朱色の鳥居をくぐった。