第1章 手紙
見るからに落ち込んでいるこんのすけに、罪悪感から慌てて声を掛ける。
『あ、そんなに落ち込まないで。まだ審神者にならないって決まった訳じゃないからさぁ』
と、言って口をつぐむ。
そんな無責任な事を言ってしまって良いのだろうか。
流れる沈黙。
それを破ったのは他でもない、私だった。
『いや、正直に言うとさ。なるならないって言うよりも、自分には向いて無いんじゃないかなって』
こんのすけから目を背ける。
『特に優れてるって訳でもないし、クラスだとどっちかって言うと静か目なグループだし。
選ばれたのも、私になんか不思議な力?みたいなのがあるってだけでしょ?
だからそんなんで歴史を守れるのかなぁって思っちゃってさ……』
「それは自分には無理だと、仰有っているのですか?」
うつ向いたまま、静かに頷く。
するとこんのすけが、廉の手に自身の手を重ね、此方を見据えた。
「私目はそうは思いません!!
誰しも、最初は臆病になるものです。主様なら出来ます!!
それに、主様一人で歴史を守る訳では御座いません。主様の他にも審神者はおります。勿論、私もおります!…まだお会いしていませんが、刀剣男士達だっております!
……もう一度、お考えなさいませんか?」
『こんのすけ…』
「もし、歴史が時間遡行軍の手によって変えられてしまったら、主様のご家族やご友人の存在自体無かった事にされてしまう事もありえるのです。
……過去が変われば、未来にも大きな影響が出ます」
こんのすけの最後の方の言葉は、掠れて聞こえた。
それだけ時間遡行軍は恐ろしい存在だという事だろうか。
私なら出来る、か。
『ごめん、やっぱりもう少し考えさせて貰えないかな?』
「はい。勿論で御座います……」
『あ、でも…』
上手く話に乗せられたような気もしなくも無いけど。
そこまで言われたらね。
『ちょっと、前向きに考えてみるよ』
「本当で御座いますか!?」
急にこんのすけの声のトーンがさっきよりも高くなった事に、私は思わず吹き出した。
……審神者、かぁ。