第1章 手紙
そんな私に舞い込んできた、審神者のお話。
面白そうだからやってみようかな~、という考えは私には出来なかった。
「急いで決める事はないわ。ゆっくり考えなさい」
『……うん、そうする』
そう返事をすると、私はリビングを後にした。
風呂を済ませると、自身の部屋のベッドに倒れ込んだ。頭の中ではぐるぐると審神者の事が回っている。
『はぁ』
今日はもう寝よう。
明日は休みだし、明日じっくり考えれば良い。
そう一人で納得すると、私は部屋の明かりを消しベッドに潜った。
━━……
ボフン、ボフン
『んん……ん……ん……』
ボフン、ボフン
「主様!主様!」
軽い衝撃と自身を呼ぶ声が夢の続きを妨げ、深く沈んでいた意識は、徐々に浮上していった。
霞んでいる視界には、私の腹の上で跳ねる黄色い物体が見えた。
「やっと起きられましたか!……はっ、お早うございます、主様!」
『…………』
机から眼鏡を手に取り、掛ける。
やっと晴れた視界に、黄色い物体。もとい顔に化粧を施したずんぐりな狐が座っていた。
気のせいか……
「ちょっ!!夢では御座いませんよ!!寝ないで下さい!!」
『えぇー。今、何時……』
「えっとですね……現在、午前6時に御座います!」
『まだ、寝れる…』
「寝ないで下さい!主様ー!」
朝早くに叩き起こされた私は渋々起き上がり、目の前の狐の話を聞くことにした。
「改めまして。この度、主様の担当となりました。こんのすけと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
『いえいえ、こちらこそ。こんのすけだね……噂で聞いてるよ』
この狐のこんのすけは審神者のサポートをしてくれると何処かで聞いたことがある。
「左様で御座いましたか!
実は私、今回初めて担当を持たせて頂きまして、是非とも主様にお会いしたく、このような時間にお邪魔させて頂きました!それでですね……」
こんのすけが急に話を進め始め、私は戸惑った。
『ちょっ、ちょっと待って。
その事なんだけど、私まだどうしようかなって悩んでて。だから、その』
わざわざ挨拶をしに来てくれたこんのすけに、申し訳なく感じて口ごもる。
「そう、ですよね!私としたことが、とんだ早とちりを、失礼致しました」