第1章 手紙
何時もの学校の帰り際、自分の家のポストに手を伸ばした。中には回覧板と少し分厚い手紙が一通。
宛名は……私…?
誰から送られて来たのか目を通すと、そこには"政府"と書かれていた。
政府が私に何の用だろうか。
あ、選挙関連の手紙か?……まぁ、良いか。
と簡単に片付けてしまうと、鞄から鍵を取り出し鍵穴に差し込み回した。
『ただいまー』
と言っても、返事はない。家には私だけ。
玄関で靴を脱ぎ、リビングに向かう。回覧板は机に置き、私宛の手紙は上の部分をハサミで切って中に入っていた紙を取り出し広げた。
天宮 廉 様
この度「審神者」に選ばれた事を
此処にご報告させて頂きます。
つきましては……
『……はぁ?』
日が暮れ、夕食を食べ終えた頃。私は目の前に座る父に政府からの手紙を見せた。
政府からの手紙と言うことに気付いた父は、驚いて声を上げた。何事かと母が食器洗いを中断し父の手元を除き込んだ。
「…この度、審神者に選ばれた事を此処にご報告させて頂きます……!!」
「審神者……!!」
はっ……と母は息を飲み、父と顔を見合わせた。
「凄いな……!!」
「廉も……!!」
━━西暦2205年
歴史修正主義者による過去への攻撃が始まった
歴史を守る使命を与えられた審神者は
最強の付喪神「刀剣男士」と共に過去へ飛んだ
……とまぁ、審神者とは歴史を守る使命を与えられた人達の事を言う。
そして、それに私は選ばれたという事だ。
審神者は現代では有名な職業に成りつつある。憧れる人もいるくらいだ。しかし、その審神者には政府に選ばれた人しかなれない。
審神者になる試験もあるらしいのだが、とても難関と聞く…
そんな中、何故私は選ばれたのだろうか。特に成績や運動が良い訳でも無いのに。
私に歴史が守れるのだろうか。
「……廉。お前はどうしたいんだ?」
目の前に座る父が真剣な表情で私に問う。母もその様子を静かに見守っていた。
『突然の事過ぎて、まだ良く分かってなくて。
自分がどうしたいのかも、まだ良く分からない』
高校3年にもなって将来の夢も決まってない。取り敢えず、進学はしたいなぁって位。