第1章 手紙
「だーかーらー!これ以上神力を酷使しますと身体が持ちませんよ!!」
『大丈夫、大丈夫。自分の身体は自分が一番良く分かってるから』
「大丈夫じゃないから言っているんです!」
「二人共喧嘩は良うないぜよ。
………そうや、札を使うたらどうなが?」
陸奥守が二人の間に割って入り、こんのすけに質問を投げ掛けた。それに対し、こんのすけは陸奥守の質問に首を横に振って答えた。
「それは出来ません。札はあっても手入れ用の人形が御座いませんから……重要なのは人形であり、札はあくまでも電池の様な役割です。
札だけを使っての治療には、少ない力を大きな力へと変化させるという、それなりの高度な術式が必要になります。
手入れに使用した術式とはまた異なります。なので…うんぬんかんぬん……
と言う訳です。お分かり頂けましたか?」
「………ん~、難しゅうて良う分からんけんど、余は札だけでは出来んってことか?」
「はい、そういう事です」
「ほぉ…そがな話初めて聞いたな」
陸奥守とこんのすけが札について話している隙に、私は同田貫に近寄り神力を流し込み手入れをしていた。
こんのすけは札の話が終わると、私が同田貫の手入れをしている事に気付き、声を張り上げた。
「…って、主様!!いつの間に!!?」
『うん、これくらいでしょうか』
「あぁ、これで戦でも大暴れだぜ!ありがとな」
『いえ、どうってことないです』
と言って、こんのすけの方を見るとジト…と此方を見ていた。それに力なく微笑みを返す。
神力の使い過ぎか、身体が怠い。
『大丈夫だって言ったでしょ』
「………それ、本当ですか?本当に何ともないんですか?」
『信用ないなぁ。ほら、まだ元気だよ』
……ちょっと……頭がふらつくな…
「…それで、おんしゃはあんな怪我で何処をほっつき歩いて居たんや?」
「何処って、トレーニングだよ。トレーニング。身体がなまっちまうからな」
駄目だ、視界が……段々霞んで……
立って…られない…
「主様!!」
支えられなくなった身体が大きく後ろに傾いた。背中と頭に強い衝撃が走り、思わず顔をしかめる。
意識が……深く沈んでいく。