第1章 手紙
神力を流し込んだ札を棚の隣に置いてあった人形の背中に貼り付けた。すると、一瞬札の文字が光り、人形がもぞもぞと動き出し何かを催促するように此方を見上げた。
『えっと、二人は歌仙さんと御手杵さんの手入れをお願いしていい?』
と言うと、二体の人形はコクンと頷いた。言葉が分かるようだ。
『よし。陸奥守さん、他にも負傷している方の所にも連れていって下さい』
「わしは、構わんけんど。身体の方は大丈夫なが?」
『大丈夫です』
「主様!?先程の私の話を聞いておりましたか!?」
『聞いてたよ。ほら、怪我人の前だから。部屋出よう』
こんのすけの言葉を誤魔化そうと、部屋から出る事を促す。こんのすけは納得していないようだったが渋々従ってくれた。
「おい、あんた……ありがとう」
『いえ、お大事に』
後ろから呼ばれて振り返ると、御手杵が布団から手を上げ軽く振っていた。
私は頬を緩め、手を振り返し部屋を出た。
「たぬき!おんしゃ、こがな所で何しゆー!?動ける身体やないやろ!!」
「あ?何言ってんだよ。動けるから動いてるに決まってるだろ。それに、お前だって……お前傷はどうした?」
手入れ部屋から出ると、そこには"たぬき"と言う半裸で身体に包帯を巻く見知らぬ人物がいた。
何故半裸?
「わしの傷ならこの主が治してくれたんちや」
陸奥守が脇に退き、陸奥守の陰に隠れていた私が同田貫に見えるようにした。
「こいつが新しく来たって言う主か?」
『はい、レンといいます』
「俺は同田貫正国。まぁ、俺は主が変わろうが、戦えりゃあそれで良い」
「たぬき、またそがな事言うて…」
「だってそうだろ。俺達は武器なんだからな、戦わなきゃ意味がねぇよ。
それで、いつ戦に出してくれんだ。このままだと身体がなまっちまう」
『戦にはまだ出せません。政府から連絡が来ていないので。それより、たぬきさんの傷。私に治させて下さい』
と言うと、同田貫は"おぉ、頼む"と言った。しかし、それをまたこんのすけが遮った。