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山桜【刀剣乱舞】

第1章 手紙



━薬研side━


本丸の離れ、前の審神者の部屋の前。いや、今は大将の部屋であるが…薬研は嫌な記憶が邪魔をし部屋に入れないでいた。だが、此処でずっと突っ立って居るわけにもいかない。
意を決して襖を開けると、目の前には家具の少ないガランとした部屋。
前の審神者の残された物は全て捨ててしまった。まるで居なかったかのように。

とここで、何時もと違うある事に気付く。何時なら部屋に近付いた時点で頭痛や吐き気を催していたが今はそれが起きない。どちらかと言うと、胸の辺りがぽかぽかと暖かい。


その時ふと頭に浮かんだのは、大将が本丸に来る前、昨日の陸奥守の言葉……
前の審神者の後任が来るという事で本丸の広間にて動ける者だけが集まった時に発した言葉だ。

ざわざわとざわめく広間で一人、突如傷だらけの身体を持ち上げ言った。


"前の審神者と同じような奴が来るとは限らんということちや。わしは、きっと次の主は大丈夫やと思う"


その言葉を聞いた時、俺っちはそれを本気にする事はなかった。何故なら旦那は何の根拠もなく言っていたから。

しかし、今日大将と出会いそれは変わった。大将なら大丈夫だと、前の審神者とは違うんだということに。

大将は自分に刀を突き付けられたというのに、気にしてないと言い、更には手入れをさせて欲しいと言い出し驚いたが、その時の大将の真剣な目を見て、あぁ…この人に付いて行きたいと思った。
それと同時に何処かホッとした気持ちが込み上げて来た。


陸奥守の旦那が言っていた事は正しかったってことか……


そう思いながら部屋に足を踏み入れるが身体には未だ何の変化もない。
薬研は廉の荷物を部屋の机の脇に置き、コートは畳んで隣に置いた。
大将の方は大丈夫だろうかと、今度は手入れ部屋に向かおうと部屋を出る。

すると陸奥守に抱えられる大将が目に入り、一気に自身の血の気が引くのが分かった。



「大将…!!」


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