第1章 手紙
真正面からお礼を言われ、ぽかぽかと胸の中が温かくなると同時に少しこそばゆくなった。
私は照れくささを隠す様に、薬研に目を向ける。
『薬研も座って。傷を治させて下さい』
「……いや、俺っちは遠慮するぜ」
何故かと聞き返そうとしたが、咄嗟にそれを飲み込んだ。やはり、同じ審神者に触れられるのは嫌なのだろう。
そう思っていると、薬研は更に続けた。
「……俺は、大将に刃を向けた。それは主に仕える者としてあるまじき事。刀解されても当然だ。
だから治すんなら、俺よりも弟達の方を頼む。俺っちには、治してもらう権利すらない」
薬研はそう言って、自身の刀を鞘ごと手に取りひざまずいた。そして、私の目の前に自身を差し出す。
これは、刀解してくれということだろうか。
そんなの、私には…
『……ごめん、それは出来ない。でも私に薬研の傷を治させて下さい』
「………大将」
『薬研だけじゃない。弟さん達だって治す。勿論此処の本丸皆も』
「主様」
「……ほら、本人も気にしちょらんっ言いゆーんやき。薬研も主に、治してもらうとええ」
陸奥守はうつ向いた薬研の頭をガシガシと少し乱暴に撫でた。
すると、薬研の方から小さく鼻を啜る音が聞こえた。
泣いてる……!?
『薬研!?え、何で泣いて!?私、何かいけないこと言っちゃった!!?』
「…ッ…慌てすぎだ大将」
『薬研?』
泣いたと思ったら、今度はクックッと喉を鳴らして笑った。白衣の袖口で目元を擦り、顔を上げた薬研の目元と鼻先は少し赤かったが、そこは敢えて触れないでおこう。
「…っすまねぇ、頼む」
そっと差し出された手を取り、陸奥守の時と同じように目を瞑り薬研に神力を流し込んだ。
薬研の傷は、陸奥守よりも軽症だったので早く傷が治った。
終わった後は、また訪れる脱力感。だが、今度は倒れないよう踏ん張ったお陰倒れずに済んだ。