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こんなはずじゃなかったのに

第1章 1


「ほつれていたので、まとめて直そうと思いまして。代わりにご用意いたしました」

「そうだったんだ」

白々しくなっていないか緊張したが、お嬢様は気にしていないようだった。

「でも下着まで新しいし……これ、どうしたの」

一気に心臓が跳ねる。

「そっ……それは。その寝間着にはその下着が一番合うと思い、新しくご用意させていただいたまでです」

納得いかないといった様子で、お嬢様がオレの目を覗きこんでくる。

腕を組み、下からオレを見上げるその姿。

それだけでも可愛すぎるのに、今はおそろいのパジャマを着ている。

思わず口角が上がりそうになり、
唇を軽く噛んでこらえた。

お嬢様の視線をかわし、髪を乾かす準備に入る。

手慣れているのですぐに乾かし終えた。

「川島は本当に手ぎわがいいね。プロの美容師さんみたい」

当然だ。お嬢様の髪に、いかに負担をかけず素早く乾かし、美しくまとめるか。

オレはこの屋敷にきた当初に特訓を重ね、すでに修得済みだった。

お嬢様はその事実を知らない。
オレもあえていうつもりはない。

「ありがとうございます。あの、お嬢様――」

「なに?」

「あの……これから、わたしの部屋にいらっしゃいませんか?」

オレの言葉を聞き終える前に、お嬢様の明るい笑い声が弾けた。

なにがどうしたというのか。

「あは……可笑しい、川島。今からすきな子に告白する男子高生みたいな顔!」

それがどういう顔なのかオレにはわからないが、お嬢様の目にはそう映ったらしい。

「そうですか。それで……お答えの方は?」

「うん、べつにいいよ。眠くなったらそのまま川島のベッドで寝ちゃってもいい?」

「もちろんです!むしろその方が!」

また軽やかに笑い声が弾ける。

またさっきの顔になってる、とお腹を抱えながらベッドの上を転がるお嬢様。

このまま覆いかぶさってキスしたい衝動を押し殺し、自分も入浴をすませるために部屋を出た。

     *

自室へ戻ると、そこにはすでにお嬢様が待っていた。

ベッドに腰掛け本を読んでいる。

オレの姿を確認すると、さっきのように腕を組み可愛らしい顔で睨んできた。


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