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【HQ澤】不思議な桜

第6章 芽生えたのは


おかしい。
宮田部長の時とは違った、嬉しさもあるが、むず痒い桜色をした感情がどこかでちらついている気がする。

そう思いながら宮田の演技を見ては、澤村の顔が思い浮かび、雑念だと頭の中で消し去っては部活に励む名。
あの後、自意識過剰にもあの場所では男バレ部員の視線を感じて居心地が悪く、結局別の、それでもなるべく体育館寄りの場所に移動した。
それでも見つけてくれるかと期待したが、二日間澤村には見つけてもらえず、自分も部活が忙しくなり、自然と会えない日が続いていた。

追いかけきてほしい人ではなかったはずなのに

気になってしまう。

会えていない間にあちらに自分から嫌われていると思われていたらどうしようかと心配している自分にも戸惑ってしまう。
(最初はしつこいな位だったのに。。)
気にかけてもらえるのが嬉しくて、自ら距離を縮めに行ったのに結局離れて、その事にすら気になってしまっている。
それなのに会えなくて寂しくて耐えきれないと思わないのは、劇部から見える体育館の出入口で時たま元気そうな澤村を見て満足しているからで
(そう、その程度だよ)
その位で満足できてしまう好きレベルなのである。
宮田のおまけ位に思えば、澤村より好きな宮田に会えれば良いのだ。

「いや、良くないだろ」
「・・・こんなにちゃんと部活に来てるのに。」
ある日の事、宮田に澤村との事を聞かれたので返せばそう言われる。
「私がおまけで良いんだよ」
と笑う宮田に少し距離を感じ、
「あっちがおまけなんです」
と返せば仕方ないなぁと言った表情。
あっちも上から覗く限り、平気そうな表情だし大丈夫だろうと思う。
(寂しがってて欲しいのか?)
いやいや、そんな事ないだろう。
『あぁ、想いは募るばかり』
自分の役が台詞が思い浮かぶ、
『あの人は今どこにいるのか』
『きっと私を忘れてしまったのだろう』
それでも主人公を待っている自分の役は、舞台である学校にある桜の木精。
唯一自分を見てくれる主人公と仲良くなり、進路に迷う主人公の背中を押しては卒業を見送り、最後には主人公が教師となりまた再開を果たすお話。
ずっとずっと待っている桜の精。
主人公に恋をして、再開した時、
(自分はどうする?)
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