• テキストサイズ

【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第6章 月島軍曹2



 食道が焼けるように痛い。喉が痛くて痛くて、いくら咳をしてもしたりない。
 私は床をムチャクチャに転げ回って、水を求めてあえいだ。

「ちっ。目を狙ったのに……」とクソ江渡貝の声。

 あんた、手袋に何をつけて来たんだ! さっきのが目に当たったら確実に私、失明してたぞ!!

 けど、喉が……声が出ない……水、欲しい。

 でもその前に、逃げないと。
 だが江渡貝は、包丁を持って入り口に立ちはだかっている。恐ろしい形相で、

「見られたからには始末しないと……あの人に怒られる……」

 もはやホラー映画だ。
 どうする。包丁はかわしても、あの手袋で触られたら皮膚にひどい火傷を負うぞ。

 どうすれば……。
 
 そのとき。バタンと大きな音がし、ドアが開く音が聞こえた。

「おい! いるのか!?」

 月島さんの声がした!!

 …………

 闇の中に光を見た気分だった。
 月島さんんん!!
 小樽から長いこと旅して、ついに会えた!

 もしかして私を町で見かけて探しに来てくれたのかな?

 助かった。これで悪い奴は逮捕され、私は元の時代に帰れる!!

 月島さーん!!

 ……ゴホっ。の、喉が痛ぇ!! 声が出ないし、出そうとすると焼け付くように痛い。

 私は痛みに崩れ落ち、悶え苦しむ。
 その間に江渡貝は客間を出て、出口の方に向かったらしい。
 いいぞ、そのまま捕まってしまえ、猟奇殺人犯が!!

 だが次の言葉を耳にし、私は硬直した。

「江渡貝くん、町中を探し回ったよ!」
「刺青人皮(いれずみにんぴ)を持って、どこに行っていた!!」
「前山さん、月島さん……」

 知らない男性の声と、月島さんの声。
 え? どゆこと? イレズミニンピ?

 月島さんは、私を助けに来てくれたんじゃ……。

「江渡貝!? どうした!? 何があった!!」
 彼が異常な状態だと気づかれたらしい。

「す、すみません月島さん。妙案が浮かぶんじゃ無いかと、刺青を持って散歩してたら……刺青人皮を、見られて」
「何!?」

「月島さんたちが帰ってくる前に『始末』しようと思ったんですが……そいつはまだ奥にいます。女の人で、身寄りは無いって」

 何だその不穏な紹介の仕方は。

「…………。分かった。前山は江渡貝を介抱していろ。俺がやる」

 聞いたこともないほど冷たい声が聞こえた。

/ 309ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp