第6章 桜吹雪の奥に見た背中(土方)
「後であっちに合流してもいいですか?」
「ダメだ、終わったらすぐ帰る」
何でそんなに厳しいんだろう。思春期の娘がいる父ちゃんかよ、なんて思うけれど口にはしない。だって既に怒っているところに油を注ぎたくない。
「土方さん、小せェ男は嫌われやすぜ」
「テメェには関係ねェだろ」
恐らく私たちの関係を把握している沖田さんが助け舟を出してくれてもこの態度。私何かしちゃったのかな。小さく溜息をつくと同時に近藤さんの「かんぱーーい!」という大きな声が聞こえてきた。その顔は殴られたような跡でいっぱいだったので、きっとお妙ちゃんに言い寄ったんだろうなと安易に想像できた。
「みんなでお花見したかった」
ぽそりと呟くと隣に沖田さんがやってきて、綺麗な顔が近づいてくる。
「作戦がありやす」
話を聞くと、とても簡単な話だった。
「そんなことでいいんですか?」
「お前がやることに意味があるんでねィ」
行ってこいと背中を押され、一升瓶を渡される。いつも土方さんが飲んでいるお酒だ。まだまだ不機嫌そうな土方さんにそっと近づく。タイミングよくお猪口が空いたようで、とくとくとお酒を注いだ。