第2章 射抜く瞳
影山視点
「ちゃんと、こっち見ろ」
『見てる、よ』
「見てねえだろ」
『見てるってば』
と恥ずかしそうに俯く沙奈を見て
ゾクリ と背中に何かが駆け抜ける
俺はこの顔がたまらなく好きだった
困ったように笑ったり
焦ったように笑ったり
くるくると変わる沙奈の表情は
見ていて飽きねえ
でも、何よりも好きなのは
「頼む、こっち見てくれ」
『ッ ... 』
切なげに細められた沙奈の瞳
2人の視線がやっと交じり合って、
俺はつい ハァ と深く息を吐き出した
「好きだ、本当に、」
『じょ、冗談はほどほどにして!』
いつもそうだ
俺の言葉を、沙奈は冗談だと言う
同じ中学で同じ高校
俺達は周りの烏野排球部よりも
付き合いが長い
だから勿論知っている
及川さんと沙奈が付き合っていたことも
__ その後、どう別れることになったのかも
当時から綺麗だった沙奈は
北川第一でもバレー部でも有名だった
同じ学年だった俺達は
廊下ですれ違うくらいしか接点が無かったけど
沙奈の、淡く光に透けた髪や
キラキラ と反射する大きな瞳は
一度見ただけでは忘れられないくらいに
ただただ綺麗だった