第1章 まず浮気をされた話

月島 side


ざわめき立つ新入生

僕より低いその人の群れを目で追いながら
全員が注目をしている彼女に目を向ける


北川第一中学のマドンナ


泉 沙奈


ｷｭとかたく結んだ唇
凛とした表情はとても堂々としていて
同じ高校1年生とは到底思えない


ふーん
まあマドンナって言われるだけのことはあるけど


｢ね！ツッキー！あの人だよね泉さん！｣

｢そうだろうね
全員が釘付けだし、容姿見ててもあの子でしょ｣

｢同じクラスになっちゃったりとかしないかなぁ｣

｢何組もあるうちの僕達は進学コースだよ
そう奇跡なんてこと起きるわけ無いでしょ｣



｢やっぱそうだよねえ｣
と山口は子犬のようにｼｭﾝと眉を下げた




そんなことを話していた入学式が
今はとても懐かしい




『けい！』

｢そんなに走らないの
また転けて、澤村さんに怒られるよ｣

『あ、それは嫌だ』




宣言通り沙奈はバレー部に入部

チビちゃん達のゴタゴタも収まり
バレー部は順調に起動し始めていた

沙奈は最初こそ緊張していたが、
清水先輩がいるお陰もあり
すっかりバレー部に溶け込んでいる



入学式でのあの堂々した姿も
後から本人に聞いたところ
ただ単に緊張していただけのようだ



｢よ！！バレー部の天使！！｣

｢いやいやぁ！
俺たちの天使！だろ！りゅう！｣

『お疲れ様です！
田中先輩に夕先輩！』




特に2年生と仲の良い沙奈は

よく部活帰りに
ご飯に連れて行ってもらっているらしい



ま、僕も山口と3人で
休みの日によく映画に行くけど




すっかり見慣れた沙奈の真っ黒なジャージ姿は
彼女の光に透けた髪色と良く似合っていた




綺麗だな、
なんて柄にもないことを考えていることに
少し嫌気がさしてしまうけど







泉 沙奈 は本当に、

綺麗な女の子だった