• テキストサイズ

氷華血鎖【鳴門】

第3章 零部・勧誘


「昼間ですら視界も悪ければ足場も悪い。夜になれば尚更だ。地の利が無い我々には不利になる」

「ったく…仕方ねぇなぁ…」

「待って」



重たい腰を上げかけた十蔵を小南が制する。



「事を荒げないで。穏便に済ませたいわ」

「………ちっ」



その言葉の意味を理解したのか再び畳の上で脱力する。
忍である以上、鉄の国の事については多少の知識はある。鉄の国は対忍の侍。ここで事を荒げて騒ぎになれば戦闘は免れない訳だが地の利も対策もされてる故に、いくら俺達とは言えど圧倒的に不利になるのは間違いが無い。



「今、私が色々と探ってるところよ」



大粒の雪に紛れてヒラヒラと舞う紙が時折確認出来る。



「標的の名前、何だったか?」

「………弥生チヅル。今は無き水の国の娯楽島の出身」

「あぁ…あの海に沈んだ島…」



同じ水の国出身の十蔵には覚えがある様だ。



「忍では無いが何らかの忍術を使う。大蛇丸の話では稀少な血継限界との事だ」



ふと思い出す大蛇丸の言葉。
"瞳術使いが二人、ね…"
"気を付けてね。あの子、多分稀少な血継限界だから"
稀少な血継限界…稀少と言う事は末裔か何かだろうか。





※※※





「気付いてるか?」

『はい』



昨夜から感じていた異様な気配。一応、弟妹が居る自宅には昨夜結界を張った。



『恐らく…狙いは…』

「どうするつもりだ」

『匿っていただいてる身です。ご迷惑はおかけしたくないので今日中には国を出る所存です』

「そうか…惜しい人材を手放す事になるな」



老人にしては綺麗にピンと伸びた背筋。書をしたためる手を止めて筆を置く。この国の総大将ミフネさんは静かに立ち上がるとゆったりとした足取りで片膝を付くアタシの前まで来ると皺々の手をアタシの頭上に乗せる。



「住まいはそのままにしておく。達者でな」

『お世話になりました』





※※※





『ただいま』

「あれ?ねぇねだ!おかえり!」

「おしごとはやい?」

『うん、今日はもう終わり』



駆け寄ってくる弟妹を抱き抱えて寝室に行き、ベットの上に立たせてタンスの中を漁る。幼児用の鎖帷子を肌着の上に着せてその上に着物。そしてコートやマフラーを巻き付ける。



「………おでかけ?」

『ううん、お引越し』
/ 222ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp