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氷華血鎖【鳴門】

第39章 一部・変化


あれから幾月か過ぎた。
年はすっかり明けてアタシも漸く齢が18を過ぎ、この村はまだ少し積雪をしたりしているけど春が芽吹こうとしていた。
実践式の修行を弟妹とミツさんに付けて数ヶ月。初めは1分と保てなかった三人が今や四半刻は粘る程に成長した。



「今日こそは本気出させようと思ったのに」

「ミツ兄その言葉毎日言ってるー」

「明日はさっきのところを…」



反省会をする三人を遠目で見ていると、誰かが結界を通り抜けた気配を感じる。この気配は…とその誰かが分かると自然と昂る気持ちと浮かれる心。



「………チヅ?」

『あ、御免。先に戻るね』



少し早口でそう言って踵を返そうとするとマツがニヤついた顔付きで言葉を投げる。



「姉様、襟元整えて」

『分かってるわよ』



-ふっ…-



「え、何?今の会話」

「帰ってきたんだよ」

「「帰ってきた?」」

「イタチ兄様が」

「「!」」





※※※




「………」

「麓の方は満開だったのに、この辺りはまだ五分咲きですね」

「そうだな」



鬼鮫の言葉に短く答えて周りを見ると既に里や麓は満開だった桜がチヅルの居る村までの山道の半分くらいまで来たところで桜は五分咲き。気温も落ちてきた。山頂の方を見上げると微かに白くなってるところから村の方はまだ雪が残っている事が分かる。桜は咲いていないのだろう。



「それより良いんですか?こんな唐突に帰って」

「問題無いだろう。既に結界内には入っているからチヅルも気付いてる。このまま歩いて行けば半刻で村に到着する」

「一時間もかけるのは疲れますねぇ…」

「………」



ここまでは歩いて山を登ったが、このまま歩くとは言っていない。



-スタッ-



と木に飛び乗れば鬼鮫も飛び乗る。



「お土産の果物大福を崩さない程度の速度でお願いしますよ」





※※※





「ぃよっ!」



と村の入口の鳥居に背を預けながら、揃いの外套を身に纏う二人を出迎えれば怪訝な顔をされる。



「随分と…ボロボロですね」

「まぁな。チヅにボコボコにやられたよ」

「チヅルに?」

「どう言う風の吹き回しか最近、実践式の修行を付けてくれてるんだよ」



そう説明すると二人は顔を見合わせて首を捻る。
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