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氷華血鎖【鳴門】

第36章 一部・求めていたモノ


じりじりと無言の圧力をかけられちょっとずつ後退ってたら、いつの間にか背中にはひんやりとした壁があって逃げ場を失う。
こんな薬は飲んでいいものじゃないし飲ませて良いものでも無いし最早存在すらして良いものでは無いと思う。



「何故燃やす必要がある?何の薬だ?」

『いやね…えーと…』

「………」



行燈と月の灯りを帯びる妖艶な漆黒の双眼を見て居られず視線を部屋中にさ迷わせて言葉を探す。



『げ…元気の出る薬?』

「元気?」

『そ、そう!だからイタチさんには必要の無い薬』

「………俺?貰ったのはチヅルだろう?」

『!!!』



しまった口が…と思った時には既に遅し。より一層、怪訝な顔でアタシとの距離を詰める。



『い、イタチさんが燃やしてくれないなら返却してくる!』



するり、と隙間から狭くなりそうな空間を脱して扉の所まで走ろうとすると腹部に巻き付いた腕によって動きを制されて、その反動で背中から後ろに転びそうになるのを抱き止められた。





※※※





引き止めた反動で倒れ込んだチヅルを抱き止めれば腕の中で収まる小さな身体。未だに頬を染めたままのチヅルの顔を上から覗き込めば更に頬を紅くして両手で顔を覆ってしまう。



「チヅル」

『………』



顔を隠したまま反応をしないチヅルの脇から巻物を奪って広げようとすると焦る様に小さな手を伸ばす。



『あ、駄目!』



邪魔されない様にその手を掴んで巻物に目を通す。正直、専門では無いから成分を見てもどんな効力がある薬なのかは分からない…が。いくつか知っている成分も入っていた。



「これは…」

『駄目って言ったでしょ!』

「!」



巻物を奪い返すと背を向けて無惨にもビリビリに破ってゴミ箱に捨てると薬も粉々に粉砕してゴミ箱に捨てる。



『あの酔っ払い次会ったらイチモツ斬り落としてやるんだから』



などと物騒な物言いをするチヅルは小さな耳まで紅く染めていた。



「安心しろ」

『!』

「チヅルの嫌がる様な事はしない」

『………違っ!』



弾かれる様に振り向いたチヅルは不安そうな色を顔に滲ませて俺を見ると長い睫毛に縁取られた目を伏せる。



『違う…そうじゃない………』
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