第29章 一部・愛
つぅ…と流れる血の涙。黒炎に包まれる結界。俺とシズルしか解けない結界なハズなのに結界が燃えて行く。
何だこの術は。黒炎なんて見た事がない…が、この術は発動者にもそれなりのリスクがある様だ。
「ごほっ…」
「しめた…!」
胸を抑え咳き込む、うちはイタチに突っ込もうとするシズル。だが想像もしえぬ邪魔が入る。
-ゴッ…-
「ぶっ!?」
「!?」
シズルの顔面に足がめり込み俺の喉元を簪が掠める。
-ズザザザザ-
「痛っ…めっっっちゃ痛ぇ!!!」
「チヅル…様………」
この状態で動ける…だと?一体どんな精神力をしてるんだこのお方は。通常なら意識は混濁し一週間はマトモに動けない…なのに意識も失わず攻撃する気力があるなんて実に信じ難い。
『女を舐めんじゃないよ…下衆が』
パリンと音を立てて結界が壊れ肩で息をしながらイタチを守る様に立ち塞がると着物の袖口から巻物を取り出し簪で親指を刺して傷を作ると巻物に血の一文字を書く。
「本当に薬は浴びせたのか!?」
「あぁ…」
一時は身体も動かなくなったし意識も朦朧としていた。チャクラなんて絶対に練れないハズなのに何故。
※※※
ぼふん、とチヅルが巻物から取り出したのは刀。刀身…否、刃長が随分と長く刃の部分が赤い変わった刀だった。
『殺れ、とは言ったけどそんなリスクの高い術を発動しないでよ』
チャクラが練れなくなる毒浴びちゃったから医術使えないんだから、と背中で語り掛けながら重たい外掛を脱ぎ捨てる。
「おい…何だよそれ………何でその刀をテメェが持ってやがんだ!!!」
「その刀は…父上の…睦月一族の正当後継者しか受け継げない宝刀。鉄の国の国主が保管してたハズ」
「一族の中でも受け継がれにくい血遁使いしか扱えない血遁の威力を高める妖宝刀だ。だがそれは………能力を高める代わりに使用者の命も削る!」
命を…削る…?
『これはちゃんとミフネ殿から授かったものよ』
「あのクソジジイ…!」
「その刀を使うのはおやめ下さいチヅル様!ただでさえ弥生家の者は短命…そして女性である貴女様には血遁はリスクが高い…なのにその妖刀を使うのは…」
『………るっさいわねぇ…』
「「「!」」」