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氷華血鎖【鳴門】

第26章 一部・疑心と安心


こんなに心地の良い眠りは多分初めてだからもう少し寝ていたい。抱き締めてる何かにもっとくっ付いて居たくて頬を寄せる。



『………?』



抱き締めてる…何か。何を抱き締めてるの?布団?否、布団と言う感触では無い。ぼやけてた視界がだんだんと鮮明になって来る。



「あまり大胆な事はしてくれるな」

『っ!?』



超至近距離で聞こえる声に顔を上げれば目と鼻の先に端正なお顔。おでこと鼻先なんか触れちゃってるし唇だってちょっと顔を動かせば…



-バッ-

-ズザザザザ-



勢い良く離れて土下座をする。



『ごごご、ごめ…あ、あたっアタシっ…とととと、とても最低で失礼な事を………』

「………」



上手く言葉を発せずに吃りまくっていると小さく笑った気配がした。



「いや、とても役得だった」



なんて微笑むイタチさんにぎゅうっと胸が詰まって苦しくなる。
不思議…何故イタチさんが傍に居るとこんなにも安心するんだろう。否、不思議では無い。だって本当はこの感情の名前をずっと昔から知っているから。





※※※





今日の霧羽は一際美しい。道中の時も舞台で筝を奏でてる時も…そして今このお酌してる時でさえも。昨日は仕事に出ずに休んでたみたいだが…何かあったのだろうか。覚悟した様な吹っ切れた様な美しさ。



「霧羽」

『何で御座んしょう?』

「筝が聴きたい」

『あい』



短く返事をすると重たそうな着物を引き摺りながら筝の前まで行き座して爪を付ける。兄者も来れば良かったのに、と思いながら霧羽を見ていると違和感に気付く。



「待て」

『………』



筝の弦がいつもと違う。そして霧羽の構える指先にチャクラを感じる。



-ポーン…-

-ダラララララ-



いつもより激しいリズム。そしてだんだんと視界が揺れる。これは…幻術。気持ち悪いくらいに揺れる脳内。何とか必死に音が鳴り止むまで精神を保つ。



『勘はええけど…やはりあんさんは頭が足りんせんなぁ…シズル』

「!!!」



鈴の音の様だった声が低く色味がある声に変わる。そして眼球からズルリと何かを外すと………藤色の瞳と目が合った。




















→to be continued.
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