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氷華血鎖【鳴門】

第24章 一部・獲物


"特別な術を教える"
そう言って手渡されたのは術式の書いてある巻物と赤い液体が入った小瓶。その小瓶を空に掲げて下から覗き込む様に揺らしてみる。これってまさか…



『アタシの血』

「血ぃ!?」



滑って落としそうになるのをチヅが目にも止まらぬ速さで受け止める。



『ちょっと無駄にしないで。アタシの血、貴重なんだから』



同じ人間の血なのに貴重とかあるのか?まぁ俺からすると確かにチヅは全てにおいて貴重だが。血液型が特殊…とかだろうか。



『最近、忙しくてあまり村に帰って来られないから………もし何かあった時の為にアタシを口寄せする為のもの』



チヅを口寄せ?そんな事こんな俺に果たして出来るのだろうか。何かあった時の通信手段は初めから教えて貰っているものの、それすらも使用はした事が無い…ってのもチヅが結界で村を守ってくれているお陰。



『あんまり…悪い事は考えたくないんだけど…誰かが怪我したりとか病になった時とかに手遅れにはさせたくないから』



そんな泣きそうな顔して、そんな事考えてるならずっと村に居ろよ、と言いかけた言葉を無理矢理飲み込む。チヅの事だ。出来るならそうしてる。だけどそう出来ないのは、ずっと見付けられずに居るその探し物がとても重要なんだろう。それを分かってるから…俺には何も言えない。





※※※





「えぇっ!?姉様もう行っちゃうの!?」

「まだ帰って来て一週間しか経ってないよ!?」



行かないで、と言わんばかりにしがみついて来る弟妹の頭を撫でる。せめてアイツ等をこの手で始末する迄は流暢にしてられない…って事を話せたら楽なんだけど、そんな事を弟妹に話せるハズが無い。物心付く前から三人姉弟だと思ってる二人に腹違いの兄弟が居ると知ったらショックだろうし尚且つソイツ等にアタシが狙われてると知ってしまえば寝込むに違いない。この子達には精神面のケアも必要だから。



『御免ね…頑張って探してるんだけど、なかなか見付からなくて…』

「何探してるの?」

「そろそろ教えて」

『ゔ…』



だけどそろそろ色々と隠すのも難しくなってきているのも、また事実。アタシが留守中に暁の誰かが来た時の言伝みたいに特殊な薬草を探してるとでも言うべきか…否、それじゃ誤魔化せない。
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