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氷華血鎖【鳴門】

第23章 一部・策励


あれから数ヶ月。
春が過ぎ夏が過ぎ秋に差し掛かっていた。アタシは相変わらず腹違いの兄弟を探している。否、この数ヶ月で探すのは辞めた。探さず誘き出す作戦に出た。兄弟を見付けたあの夜、情報収集を得たのは遊女からだった。あの島で生まれ育った男達だ。遊女が嫌いな訳が無いし寧ろ好きだろう。
だからアタシはそれを利用する事にした。



「霧羽太夫、そろそろお時間です」

『あい』



短く答えて煙管を鉢の上に置いて重たい腰を上げる。ズルズルと着物の裾を引き摺りながら廊下を歩けば男衆や禿が頭を垂れる。
この場所は良くも悪くも情報が沢山集まる。肝心なアタシが求めてる情報は未だ無いけども。まぁそんなのは子供の頃から知ってるし今までもそうして情報収集して来たけど見世一箇所に留まる事にしたのは誘き出す為。
ただどうしても昔のトラウマで遊女にはなれないから芸妓として…最高級の芸妓として太夫に成り上がった。ここまで名を広げれば太夫とて寝たい人はわんさかいる。だから食い付くのを待っているのだ。



-ポーン…-



お筝の前に座して一音鳴らしてから客席を一望する。まだ獲物は食い付かない。いや焦るな。まだ餌を撒いてる最中。その餌に食い付いて釣り上げるまでが勝負…否、釣り上げてからが勝負。





※※※





「えー!何だよチヅ居ねぇのか!?」



学校から帰って来るなり家の前をウロウロしてた金髪の暁装束の…デイダラが落胆する。どうやら姉上を訪ねてきたらしい。



「デイダラ一人なの?」

「おう。サソリの旦那は面倒だから行かねぇってさ」



そのくせ行くなら苺大福の土産くらい持ってけとか言うから挨拶ついでに届けに来たのに…と落胆する様子を見てマツと顔を見合わせる。最近、姉上が居ない時に限って暁の皆が遊びに来る。この間はペイン兄と小南姉が来た。
姉上からは、もし姉上の留守中に暁の誰かが訪ねてきた時の言伝を預かってるから同じ様にその言伝をデイダラにも伝える。



「姉様、今貴重な薬草を探しに出てるの」

「薬草?」

「その薬草を見付けて万病速効な薬を作るんだって」

「おぉ!流石チヅだ!うん!凄いぞ!うん!」



ペイン兄と小南姉は少し困惑してたけどデイダラは…チョロいなと思う。



「いつ帰って来るんだ!?」

「「さあ?」」

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